こんにちは。久々に音楽の話しに戻りたいと思います。
お題は「バスキング」つまり、路上演奏。日本ではストリートと呼ぶ方が親しみがありますよね。
バスキング(Busking)というのは「大道芸を行うこと」を、指します。
つまり、バスク(Busk)=大道芸、バスカー(Busker)=大道芸人です。
最近でこそ、「バスキング」「バスカー」「バスク」など、徐々に日本でそれらの言葉を聞くことも増えましたが、元々は馴染みのない言葉なので、それらの言葉が全部一色担の意味として使われている事も多いので、注意。
例えば「イギリスでバスキングのプレイヤーをしているバスカーミュージシャンです。」とか言うと、直訳すると全く意味不明になってきます。
「イギリスのバスカーです。」で、オッケー。
小さなことですが。笑
一応、英単語であることを意識して使いましょう。
以下は、バスキングという言葉の元祖である「イギリスの」バスキングのスタイルについて語った頁です。
イギリスのバスカーは「私はバスカーです」とは言わない
今回は、これまで色々話してきたバスキング関連の章より、改めて少しおさらいをしてみたいと思います。
まずは、日本で少々誤解されがちな、こんな話し。
「僕、バスキングやってるんだ!」「彼はバスカーなんだよ」・・こんな風な会話がよくあります。
昨今日本でも身近になった「バスキング」と言う言葉ですが、まだまだ馴染みも浅く、神秘的な?かっこいい響きがありますよね!
実は「バスカーです」と自己紹介するのは、イギリスではあまり好まれません。
バスキングの章で何度かお話ししているように、バスキングは、ミュージシャンの経験であったり、度胸試しや腕試しであったり。しかし、イギリスで一番多い理由が「生活のためのバスキング」です。
中には、死活問題としてやってる人もいます。
何故だかわかりますか?
ご存知のように「音楽だけで食べていくと言うのはそれだけ難しいこと」と言うことです。
つまり、日々バスキングをやっているのは、生活のため。
腕ならしや、例えば暇つぶし(笑)でバスキングをするとしたら、週1回や2回程度で済みます。そう言った方は、例えば、昼間は会社勤めなどの本業があったり、ミュージシャンであれば、普段はレコーディングやプロデュース業、ステージなどで忙しかったり。
毎日バスキングしている時間はありません。
日々日々バスキングをしていること、それはパートタイムで働いているような感覚です。
もちろん、そこに音楽の魂はありますよ。だから、カフェでパートタイムで働くよりも、音楽に携わっていることは有難いことであり、嬉しく楽しいことです。
しかし、ミュージシャンの皆、思うことは同じです。
バスキングという過酷な労働(私が指しているのは、1日4時間~8時間、毎日演奏しているバスカーのことです)、これを行い続けて、1ヶ月あたり「最低限の月収」と同等のチップを得ることを目指して、日々演奏して稼ぐよりも、誰もが大きなショウやレコーディングなどをやりたい、それらをもっと集中してやりたい、欲を言えば、もっと割りの良い仕事を、もっと大きな仕事を・・と、そう思っているのです。
ミュージシャンなら誰でも経験しているバスキング。差別化しないのがリスペクトなイギリスのミュージシャンシップ
ライセンス所持のバスカーのように日々演奏してると、「君、バスカーでしょ!?」とか「バスキングしてたよね?」と、周りに言われることは多いです。
しかし、我々が誰かに自己紹介する時に「バスカーです」とは言いません。「ミュージシャンです」「ギタリストです」などと、言います。
私も、今では絶対に言いませんね。
昔は自慢してたことがあったんですよ。(笑)公式バスカーになるためのライセンスを取得するのは難しい時代でしたし、イギリスではバスキング活動なんて当たり前でも、日本では当時はバスカーなんて、すごく珍しい存在?と言うか、珍しい言葉でしたからね。
バスカーなんて言葉が日本でも浸透してきたのは、ここ最近ですよね。
日本だと、その「バスカー」という洋風な言葉の響き(英語なんですけどね。笑)や、ストリートで演奏なんてかっこいい!なんてポジティブなイメージもありますから、それを肩書きにすることはおかしくはありません。
しかしイギリスでは、バスカーは、音楽家の中でも比較的、庶民的であり、時にネガティブなイメージを持っている方も多いですので、バスカーでしょ?と言われて大喜びする人はいません。
それが現実なのですよね。
バスキングで演奏しているところを見た・・・そんなお客さんからは「君、バスカーでしょ?」と言われますし、そう言われたからと不愉快には全くなりませんよ。
むしろ、バスキング姿を覚えてもらえていて、嬉しいですよね!
ただ、イギリスの音楽仲間同士で「君、バスカーだよね」と言ったり、「彼はバスカーなんだよ」と、紹介されたりすることはありません。
「彼もミュージシャンなんだよ」「彼女はシンガーなんだよ」と、まあ、ごく普通にこんな感じ。
例え、バスキングだけで生活していたとしても、同じミュージシャンですからね。あえて「彼は〇〇で・・」なんて言う必要もないし、プロフェッショナルだろうがアマチュアだろうが、「同じミュージシャン」というリスペクト、それがミュージシャンシップです。
あえて差別化するなら、「彼はメタルをやっていて」など、音楽のジャンルくらいではないでしょうか。
それに、プロ、アマ問わず、8割くらいのミュージシャンはバスキングの経験がありますから。
珍しいことでも何でもなく、誰でも「それをいえば僕も元バスカーだよ!」と、なります。(笑)
あの、サー・ポールだって、バスキング経験がありますからね。
ただし、ポールの場合は、既に有名になってソロになってから、ロンドンの地下鉄の駅前でお忍びで・・・ですけどね。まさかあのポールだとは、誰も気づかなかったとか。(笑)
だけど、14、15歳くらいの時に、リヴァプールのどこかの路上で演奏くらいしたことがあるんじゃないかなーと、思います。あくまで想像ですけどね。やってないかもしれませんよ。
でも、仮にもしバスキングをやっていたとしても、それを、ビートルズの歴史として加えて紹介するか?といえば、加えないでしょう。
それくらい、みんな普通にやっていることで、あえて言うことではないんですよ。
バスキングをやることは、あまり自慢にはならないイギリス
例えば私は、時折このサイトで「バスキング歴10年以上やってます」と謳っていますが、バスキングの話しを中心に書いている事の理由以外に、具体的な数字がそこそこあることで、この分野に特化してるのかな?と言う分かりやすさがあるので、そう書いてます。
レコーディング等の他の仕事や、イタリアでの活動、日本の帰国など、色々時間を差し引いたとしても、総時間15,000時間以上は確実にバスキングをやってます。
10年以上、まあだいたい14年弱くらい?そのうちで、カッツリ毎日やってたのが10年だとしても・・・
最低4時間×7日×52週間、これを10年でも14,560時間。
あっ、イギリスではクリスマスの12月25日は休まなければならない(笑)ので、上記のざっくりした時間をベースにしたとして厳密な数字で言うと、14,556時間ですかね。
でも、毎日4時間じゃなく、1日8時間や10時間やる時もありますからね。10時間は新人の頃のみ。さすがに10時間は最後、人間でなくなるのでもうやりません。(笑)6時間くらいは、普通に時々やってると思いますね、バスカーの誰もが。
バスカーに収入の保証はないので、出張の仕事であったり、旅行であったり何か特別なことがない限りは、毎日やるのが普通です。デートだから、飲み会だから、と休む事はないわけです。
日中にスタジオの予定があれば、夜~夜中バスキング。遠出して海へ遊びにいくならば、早朝や深夜にバスキング。
飲み会があるならば、その前にバスキング。ちなみに、飲み会がある時に、22時からバスキングに行こうと予定し、それを行ったことが何回かあるんですが、これはダメですね。(笑)
盛り上がってるところを抜けるのは気持ち的にも辛いし、飲み会の後では、演奏の集中力もゼロですね。(笑)
その時間帯だと、同じく飲み会帰りの通行人さんも多いので、そう言う人に絡まれては、一緒に歌って踊って騒いだり、無駄におしゃべりしたりしてましたね。仕事の意識ゼロ。(笑)
飲み会の時は、それよりも前の時間帯にバスキングをやりましょう。
できれば、ギターを家に置きに戻れる時間の余裕があった方がいいです。
ギターを持って、ディナーや飲み会にいくのは辛いぞう!・・・ですよね、ミュージシャンの皆さん。
と、言うわけで話しを戻し、例えば・・
「バスキング歴10年以上、総時間15,000時間はやってます!」と言うことは、何となくちょっと凄いように見えるんだけども、実はイギリスでは自慢ではなく自虐になります。(笑)
間違ってはいけない!バスカーは「肩書」ではなく、生活の上で普通のことなんです
バスキング歴10年以上、総演奏時間15,000時間と仮定し、これをそのままパートタイムに置き換えてみてください。
なんら凄いことではありません。むしろ、時間少ない。(笑)
「バンド活動をしているので、週1回はライブ活動、週2回は皆でスタジオ入り。夜は家で作曲とギターの練習。その他の時間はカフェでバイトで、15,000時間以上は働いてます!」
つまり、これと全く同じなのです。
ミュージシャンであれば、初めて会う人に自己紹介する時に、わざわざパートタイムの話しを自ら出しませんよね。
それと同じ。
「カフェで10年以上働いてます」、これは、サービス業のキャリアとしても、期待するスキルとしても信頼できますよね。
でも、それがパートタイムワークだったとしたら。日本では「社員として10年働いてました」と履歴書に書くのと比べると、少し下に見られてしまうのが現状です。
実際は、そんなことはありません。パートタイムワーカーだってスキルの高いサービスマンは沢山いますし、キャリアを積んでいる事に代わりはありません。
それだけの年月、逃げることなく仕事に向き合っていた事実と、それだけ続けていられるという忍耐力、そして周りの信頼だってあることでしょう。
大事なのは、その仕事にどこまで真摯に向き合ったかと言う経験です。
そういうところをキチンと見てくれる人たちや雇用主は沢山います。
しかし、一般論として、現実は厳しい、それがこの社会です。
10年パートタイムで時間を費やしてしまった・・・いざ、転職しよう!社員になろう!そう思った時、履歴書に書かれた項目だけを見て判断されてしまうのです。
そのカフェでものすごい才能を発揮して、リーダーシップを取っていたとしても、それを知ってるのは現場を共にした仲間だけ。
一歩表に出ると、その履歴、肩書きだけで判断されてもおかしくはないのです。
ここで一回、バスキングに置き換えてみます。
「10年バスキングをやっています。」と、言う音楽家と、「10年、レコードレーベルでプロデューサーをやっています。」(あるいは「10年、ウエストエンドでミュージカルの舞台に出ています。」など)
どちらが「肩書」や「実績」と呼べますか?いえ、「呼べそう」でしょうか?
バスキングも実績ではあるので、肩書ではありますよね。ただし、それが所謂「使える」肩書かどうかと言われると、それはNO。
イギリスでは「バスカー」は、肩書でも何でもないのです。
パートタイムの例に戻しますね。
ものすごくスキルがあったとしても、「パートタイムで10年アルバイトリーダーしてました。」と言うのと、「社員として10年スーパーバイザーをやっていました。」これらの聞こえ方と同じです。
それを延々と続けて、お店を任せてもらえるような立場になったとしても、後輩が沢山入って尊敬される存在になろうと、時給がアップするくらいで、その実績を文字に起こせば「フリーター」、続けても続けても同じ。新入社員が入れば、現場経験は自分が上でも、社会的な立場は下になるのです。
本人が充実して働いていようと、世間一般的な見られ方としては「まだアルバイトやってるの?」と、言われることが多い、それが現実。
ただ、続けること、そこに希望が全くないわけでもありません。
雇用主に認められ、パートタイムから、社員にスカウトされることだってあります。
あるいは・・・例えば、カフェであなたが誠実に接していたお客様。その方はあなたが大好きでカフェに通っていたことを、あなた自身は知りません。
そのお客様は実は資産家であったり、沢山の店を経営するオーナーで「お店を持とうと思ってるんだけど、君にまかせたいと思ってる」と、突然、大きなオファーを持ってやってきました・・・なんてことも。
その、何気なく訪れてくる不特定多数の人たちとの出会いの中で、人生で一発逆転のチャンスが訪れることだってあるかもしれないのです。
社員もパートタイムワーカーも派遣社員も関係ありません。人(相手)の心を動かすことができるのは、その人の魅力と、その人の誠実な仕事ぶりです。
「安い時給でも、一生懸命働いてきてよかった!」そう思える瞬間ですよね。
バスキングは、まさにそれらと同じだと思ってください。
バスキングは、ごく普通に身近にあって出来るもの。誰でも今日からバスカーに?
どうでしょう。
バスキングという分野は、ミュージシャンの仕事としては、庶民的でありながらも時にネガティブな印象を周りに持たれることがある・・・という、厳しい現実がお分かり頂けたと思うのですが、それだけではありませんよね。
バスキングは、とっても身近なもの、私たちが普段生活している事と何の変わりもないものなのです。
自分のヤル気次第でやれそうだと思いませんか?
パートタイムのように、面接はありません。
イギリスの一部の指定場所でバスキングするにはオーディションを受けてライセンスを所持する事が必要ですが、基本的な意味としては、おさらいすると「バスキング=大道芸を行う事」です。オーディションも免許も不要です。
路上に立って演奏すれば、バスキングになります。
ただ、国や場所によって、ライセンス必須の指定場所があるので、それだけ気をつければ、大丈夫。
家の近くの路上でやっても、バスキング成立です。
・・と、いうことで、今回はおさらい含めての、イントロダクションでした。
現在は「バスキングに不要なもの」について語っていまして、前回は「セットリスト」について話し、このセットリストがバスキングには不要であるとお伝えさせて頂きました。
「バスキングに不要なもの」のお話しは、以下の頁からはじまっています。
このサブジェクトは長いので、「バスキングを毎日やりたい」「それだけで食べていきたい」と思っている方のみ、参考にしてください。
改めてお伝えすると、これらの頁で私がお話ししているのは「プロモーションの一環として」のバスキングの注意事項ではありません。
週に1回、2回で、1日あたり1~2時間程のバスキングとなると、また違った方法(内容)になります。
あくまで、生活のためとして、「毎日路上に立ちたい!」「長時間バスキングをやりたい!」そう思っているバスキングビギナーさんへ向けて書いておりますので、ご了承ください。
余談ですが、バスキングは、例えプロモーションであろうとも最低でも2時間はやってください。30分では無意味です。
その辺についても、同章の、どこかの頁で触れています。見つけて!(笑)
バスカーです、そう自ら言うことは、海外では自慢でも何でもありません。
バスカーには、ミュージシャンの他に、パントマイムや、絵描きさんや、銅像を演じる人たち、色々な芸を持って挑んでいる人が沢山います。バスカー=大道芸人ですからね。
そんなバスカー達は、お客さんを喜ばせると言う、バスカーとしての使命や目的を行なっていると同時に、自らの生活のために一生懸命、日々バスキングしているのです。
そんな、生活に密着した音楽活動であるからこそ、バスキングは、敷居の高いものでも何でもなく、自分がやろうと思えばすぐに手が届く、とっても身近なものなのです。
あなたも今日からバスカーの仲間入りしませんか?
念のため追記すると、ヤル気さえあればとっても身近なバスキングですが、「稼げること」とは、また別です。稼げる保証はありませんからね。具体的にこれだけ稼げると言う数字は絶対に出せないのがバスキングです。ゼロだって覚悟してください。
まあでも、私の経験上ゼロはないですが。これが続くと食べていけない!と焦る金額の経験はいくらでもあります。(笑)
ただ、稼ぎやすくするための方法なら、あります。
今回は、「バスキングに不要なもの」の章の続き、前回の「セットリストの話し」につながる内容に戻る前に、改めてバスキングについておさらいをしてみました。
次回は、セットリストに続いて「不要なもの」である「譜面台」についてお話しします。
そこから、稼げるバスキングの選曲について、具体的に話していきましょう!
ご一読ありがとうございました。