バスキング(路上ライブ・ストリートパフォーマンス)の心得、その壱、 その弐で、これまでお話ししてきて、何となくバスキングのイメージが伝わったでしょうか?

「なんだか大変そうだぞ」と、思った人も多いと思います。実際は大変な事でもないのですが、様々な意味で、大変な部分がありますからね。これは、どのお仕事でも同じだと思います。面倒くさそうな事を始める一歩、というのがやはり一番大変であり、始めてしまえば、実はそんなに構えるほどの事ではなかったりするものです。

今回は、海外でバスキングをやる具体的なプロセスの第一歩として、「目的の確認」について、話しを進めていきたいと思います。まずは、「何を目的としてバスキングをやるか」ということを、明確にする事から始めてみましょう。

これまで私は、海外でのバスキングのお話しを、概ね「生業」としてご紹介してきました。つまり、滞在が前提であるわけです。

旅行先で演奏を披露するのと、その土地に腰をすえて演奏するのとでは、また違ってきます。

この記事を読んで下さってる方で、「海外に住んでるわけでも、これから滞在するわけではないんだけど、旅行の思い出として海外で演奏の挑戦をしたくて・・・」と、思っている方がいたら、今までの盛り沢山のお話しをゴメンナサイ!とお伝えします。

逆に、「現在、海外に滞在中です」「これから留学や仕事で行きます!」「本腰を入れて考えてます!」という方であれば、これまでのお話しをそのまますっと受け止めてください。

そうではなくって、一日だけの旅先の体験、という事ならば、バスキングの演奏そのものに関して言えば、もっとイージーになります。

バスキングをする事自体に飛び込むのはヨイショがいりますが、これまでお話ししてきたように、4時間も10時間も演奏する必要はありません。気軽に披露をする、と考えて下さい。

・・・え?「だから、最初からバスキングに少し挑戦したいだけだって!」と、言う話しだよ、って?そうでした、バスキング文化を語るうちに、ついつい熱が入り。大変失礼しました。

これまでのお話しは、「海外のバスカーは、そのほとんどが生業としてやっている」と言う事で、海外における一般的なバスキングのイメージはこんな感じですよ、というお話しとして受け止め、そこはご愛嬌でお願い致します。

では、旅行記念、あるいは、お試し・挑戦としてのバスキングに焦点を当てていく上で、大事なことからお話ししていきます。

 

 

旅先でのバスキングの心得

まず最初に、もし旅行先でバスキングを考えているのであれば、「生業」「仕事」ではなく、そこは日本的に「プロモーション」「お披露目」という姿勢に変えて下さい(とはいえ、本腰のプロモーションをしてはいけません。その理由はまた追々お伝えします)

つまりは、「異国の皆さんに日本人が演奏をお届けします!」という、軽いお披露目&音楽のサプライズギフト的な感覚です。

生活がかかっているわけでは無いので、2時間も4時間も、6時間も演奏しなくても大丈夫です。30分、それこそ20分でもOKです。

長時間演奏しても構いません。ただし、それがチップを稼ぐという目的となれば、問題になります。あなたは、あくまでその旅行先、その土地のお客様です。許可無しでお金を稼ぐことは出来ません。

ですから、逆に、過酷なまでに演奏を長々する必要はなく、むしろ、長時間やりすぎないほうが良いのです。

一般的に、投げ銭は非課税と言われていますが、それもその金額や、状況によります。「心付け」程度であれば、それは、ただのチップです。しかし、一定の金額を超えたり、その収入で生活をしているのであれば申告の必要もありますし、受け取ったチップが、仕事に関連していれば、当然課税対象となると思います。ましてや、外国人で短期旅行者となると、当然ながら金銭を受け取ることはできません。トラベラーとして、その国、その国の法律に従う義務があります。

例えば、「私は日本人です、こんな音楽やってます」というような感じで、旅先で出会った外国人に演奏をお披露目をする、それが基本だと思って下さい。そしたら、聞いていた人が感動して珈琲をご馳走してくれた!・・・これならOKです。

では、3泊5日の旅行者にも関わらず、演奏してチップをもらってしまったらどうしよう。大丈夫です、そんなに簡単にチップは入りません。30分程度のバスキングであれば、まさに、根性試しの場としての経験で、楽しい思い出が胸に残るのみです。

しかし、もしチップを頂いてしまったならば、帰りのその足で、そのチップを全額、募金しましょう。数十分の演奏であれば、チップが入ったとしても微々たる額です。ほんのお茶代程度になれば立派な方です。(私は英国を前提に話していますが)基本的にはチップは非課税ですから、その場では恐縮せず、どなたかチップを下さった方の善意を受け取り、受け取った額はそのまま、募金という形で全額、英国にお返ししましょう。これは大事な事です。

あくまで、チップを得る目的で演奏をすることはNGだという事を認識して下さい。

その土地に滞在するわけではなく、旅行者として、という事であれば、私はむしろバスキングは推奨しません。見知らぬ土地で旅行気分で試す事は危険のリスクを伴うし、たとえやれたとしても、どこまでが可能な範疇か、そこの線引きが難しいです。旅行者であれば、現地のジャムセッションへの参加を強くお勧めします。

ジャムセッションの話しは、また改めてお話ししますね!

物語風の記事ではありますが、こういう記事もありますので、取り急ぎ、その雰囲気だけでも感じたい方は、ぜひ、海外ジャムセッションの参考にして下さい。

ロンドンの都市伝説とJAMセッションルール 〜東vs南編〜

ところで、これまでの話しの中での疑問点を一つ、解決させておきますね。

英国での許可制のバスキング、つまり免許を持っているバスカーのバスキング収入は非課税です。いくらチップを得ても、課税対象にはなりません。(所得はなくても、当然ながら、カウンシルタックスなどの義務はあります。学生のように免除にはなりません。笑)

ただし、バスキングのピッチでCDやグッズなどを売る「物販」は固く禁止されています。「CD販売を含め、自身の売り込みをしてはいけない」というルールがあると、前回お話ししましたが、その理由は、通行人の方へ自分を主張した音楽を押し付けてはならない以外に、CDやグッズを売る事=営利目的になるため、という事なんですね。そうなると、そこは課税対象になってきます。また、それも自己申請になりますので、一体全体、どこまで何を売って儲けたのか、免許を与えても、管理者はそこまで管理できません。なので、「絶対NG」として、禁止されているのです。もちろん、私もバスキングの場所でCDなどを売ったことはありません。

あと、バスキング中の名刺交換も禁止なのです。これも、ビジネス目的になってしまいますからね。

実際のところは、通行人の中で、音楽関係者や、イベントの主催者で余興などを探している人が、名刺を置いていく事はしょっちゅうです。「これはお返しします」と、名刺を持って追いかけていくわけにはいきませんよね。名刺を渡され、少しお話ししたい・・と言われて、話さないで突き返すのは逆に不自然です。そうなれば、名刺交換とほとんど変わりませんよね。(笑)

また、バスキングがきっかけでお仕事の話しに繋がる事もあります。基本的には、バスカー皆が、音楽家としてステップアップしたいと思っているわけなので、何かのチャンスは狙っているわけです。

なので、実際には、自らの営業として名刺交換をすることはありませんが、例えばバスキング中に声をかけてくれる相手が、連絡の途切れていた知人であったり、どうしても必要だと感じた際だったり、私の例であれば、相手が日本人であり、その方がお名刺をくださった時のための礼儀であったり。

実際には、名刺を持っているバスカーばかりです。(笑)

しかし、それを自らの営業として、通行人に自由に渡したり、無作為に名刺交換をしてはいけない、ということです。

バスキングを利用した営業、売り込み姿勢は絶対NGですが、向こうから(通行人から声をかけられて)来た依頼を受けるのは構いませんし、そこで連絡を教えたい相手だと判断したならば、名刺を渡そうが構いません。

ただし、通行人は見ず知らずの人というのが前提ですから、それの全てが正しい依頼かどうかはわかりません。そこは、自己責任です。当然ながら、バスキング場所の許可をくれた管理者に責任は問えません。

バスキングの演奏で何かを掴みたいと思うのは当然のこと、バスカー皆がチャンスを掴むために、オファーの声は積極的に受け入れています。仕事の依頼でお声をかけたいと思う方がいたら、ぜひ、バスカーに声をかけてみてください。

ちなみに、彼らは「仕事中」です。その演奏を止めて、オファーの声をかけるというのは、いくらチャンスを与えるとしても、その時点では交渉前であり彼らの仕事の時間を頂戴しているという事。いきなり声をかけて話し込むのは無粋ですから、まずはスマートに、チップを入れてから声をかけてあげてくださいね。

バスキング関連の仕事は「基本無償」のイギリス

バスキング中のバスカーの営業は不可、しかし、バスキング中に外からオファーを受け、「バスキングのピッチ以外」で仕事をするのは可能です。

ただし、そこから発生した「仕事」は当然、課税になります。つまり、バスキングそのもので得たチップは、合計で5ポンドに満たない時もあれば、50ポンドの時もあり、それらはあくまで「心付け」であるため、非課税となるけども、バスキングから発生し、受けた仕事というのは、すべて課税になるわけです。そこは、きちんと申告していきましょう。

また、ライセンス所持のバスカーに対し、「バスキング」という言葉を掲げての出演依頼をする事は、基本的に、国でバスキング活動を管理する部署(役人)の許可を得てから広報を通し、そこからバスカーが依頼を受けることになります。

私は、バスカーとして、雑誌、新聞、TV、フィルムとオファーを受けたことがありますが、そのすべてが、もちろん無償です。無償でもありがたいですよね、こちらとしては。

ちなみに、メディアへ向けての撮影の許可も、オファーの際に管理部と広報から取るのですが、その許可を取るのが、とんでもなく面倒で細かく、なかなか返答が来ないそうです。これは、バスカー本人や、バスキングという行為を撮影する、という事ではなく、「路上」という公共の場での撮影になるから大変なんですね。一般市民の通行人の皆さんの邪魔にならないよう、最大限の配慮をするべく細かな時間を指定するほか、撮影機材などの持ち込みに対しても、危険物ではないかどうかの確認含め、それを持ち込むと通路にどう影響するかなど、とにかく細かいそう。

バスカーがメディアの依頼を受けるならば、スマホで自撮りした写真や映像を渡して使用権を与えた方が早いかもしれませんよ。(笑)

バスキングを通じての仕事で、バスキングという言葉やバスカーという肩書きがつくものは全てボランティア。金銭を受け取る事は出来ません。しかし、バスキング活動から発展した個人で受ける仕事は課税対象のビジネスとして、自身で責任をもって管理するわけです。

ちなみに、当然ながら私も、無免許で(笑)バスキングをする時もあります。免許制のバスキングは完全にスケジュール性になりますから、ロックなイメージではないんですよ。そうではなくて、所謂、普通のバスキング、一般的なストリートパフォーマンスですね。やはり、そちらの方がロックな勢いがあって好きですね。でも、その場合、ほとんど知らない土地というわけなので、チップも入りませんし、まず、チップが入る前に移動します。当然ながら、一番最初に、勢いで英国リヴァプールでバスキングをやった時も、チップは受け取っていません。

基本的には、日本のバスキングスタイルである、プロモーションやお披露目の一環という事をベースに、ちょっと演ってみました、的な感じでしょうか。あまり本腰入れて、ガツガツと生業としてやるよりも、その方がジプシーっぽい匂いがして格好いいですよね。

なので、一番ロックで熱いバスキングスタイルをやっているのは、日本という事になるんですかね。(笑)今までの話しはなんだった、という事になりますが。

ところで、日本でのバスキングで得たチップというのは、どんな感じなのでしょう?やはり、非課税?それとも課税対象になるのでしょうか。

知人で、東京都公認のバスカーライセンス制度で、免許を取得した人がいます。

実は、東京都で大道芸をライセンス制度にする事になった、きっかけであり、そのモデルこそが、英国ロンドンのバスキング制度だという噂があります。あくまで噂なので、真相は、ご存知の方に訊ねてみてください。

その方の話しによると、非課税という事でしたが、ただ、知人の場合は本業もあり、イベント出演もあり、そんなに頻繁にバスキングを行える時間もないと思いますので、やはり度合いによるのかもしれませんよね。毎日毎日バスキングをし、それだけで生活しているのであれば、当然課税対象でしょうし、それをビジネスとしたり、一定額を越す収入を得ていれば、立派な生業となりますから。

何れにせよ、そういった法律も日々変化するものであると思うので、ルールはマメにチェックしたり、不明な点は税理士さんに聞いて、しっかり自己管理することが大事ですよね。

バスキングで暮らすということは、一見して自由に思えますが、やはり、自由ほど不自由なことはないということです。

もちろん、音楽活動全般に言える事ですよね。

好きな事を貫いて自由に生きるということは、学校や会社などの組織で暮らしていた以上に、注意していかなければならない事や、自己責任で管理していかなければならないという事ですよね。組織で縛られていたのではなく、守られていたのだと気付きます。

しかし、それでも音楽は楽しい、バスキングは楽しい、ですよね!

 

 

まずは目的を決める

さて、これからバスキングを始めたいと考えてる皆さん。目的は何でしょう。

自身の音楽活動のプロモーション?その活動の目標は、日本で有名になる事ですか?・・で、あれば、日本でバスキングをやってファンを増やした方が絶対にいいです。

「単純に、バスキングがやりたい!それで暮らしていきたい!」そう思う方ならば、海外で暮らす事をお勧めします。バスキングの生活事情というのは、バスキングという生業の認識が高い海外の方が確実に、やりやすいと思います。そして、どのくらいの度合いか、どんな感じかというのは、私の経験談が多少の参考になるとは思います。

「バスキングでお金を稼ぎたい!」これはお勧めしません。お金を稼ごうとなれば、今持っている生活の全てを投げ捨てて、バスキング一本に絞った生活を考えてください。で、あれば、不可能ではありません。実際に、私の仲間でバスキングの収入で家を建てた人がいます。ただ、その演奏技量も当然のこと、終始、バスキングの場所取りに気を病みながら、いくら稼げるか神のみぞ知る中、ひとりぼっち、雨の日も極寒の日も、長時間の演奏だけで1日を終え、それを一年中続けています。そこまでやればバスキングで金持ち生活も可能です。ただ、肉体的にも精神的にも、注意が必要です。

ちょっとバスキングから話しが逸れますが、「海外で音楽活動を成功させたい!」これはどうでしょう。う〜ん、バスキングでガツガツやるばかりでは、時間が勿体無いかもしれません。バスキングは期間を決めるか、空いた時間の腕慣らし程度にし、仲間作りにジャムセッションや、ジャンルによってはイベント等に通いまくって人脈を増やしながら努力を重ねていくか、状況が許すならば、音大や音楽専門学校に通った方が、早いかもしれません。

「外国人の前で根性試しをしたい、バスキングをやった!という事実を作りたい!」そんな方は、是非、今回の話しを参考に、ちょっと演ってみました、的な感覚で、お披露目してみてください。

ある、日本のミュージシャンの方が、海外に憧れを抱いていた頃、ギターを片手に一人で海外旅行に出かけ、いろんな場所でギターを弾いている写真を撮ったそうです。

実際に、ギター演奏を披露したのか、と言われたら、ほとんどがそうではなくって、「ギターを持って」撮った、記念写真だったようです。(笑)

しかし、日本にその写真を持ち帰って知人に見せて歩いていたところ、「君、海外で演奏してきたのか!?」と、あれよあれよと、噂が広まり、それをきっかけに演奏依頼が増えたと仰っていました。(笑)

私は、それはアリ!だと思うんですよね。

何事も、きっかけや印象は大事です。ハッタリから始めて、それがハッタリではなく事実となることだってありますからね。まず、一人旅で、見ず知らずの外国人に、盗難される危険だってあるのにカメラを渡し、ギターを出して人前で写真を撮ってもらうなんて、それだけでもかなり度胸があると思います。海外で演奏してきたぜ!くらい、言っても全く問題ないです、そこまで出来る方なら、どんな場所でもきっと演奏できる方です。

私も、一番最初は、ほとんどそれと同じ手を使おうと思っていました。(笑)

とりあえずギターを背負って行って、どこも演奏することができなければ、写真だけ誰かに撮ってもらおう、と。それで、友達には「演ってきたぜ!」と、言えばいいかなと。

運よく、いくつかの場所で演奏する事が出来ましたが、でも、そこがあまりに治安の悪い物騒な場所であれば、私も演奏を選択しなかった可能性もありますからね。旅先の場合は、それだけは、重要視しなければなりません。「演奏が目的だから」と、自分の身よりも演奏の意識が先にきてしまうのは、海外ではあまり良い事とは言えません。

ですから、とりあえず、ギターを背負っておいて、気分や状況により、どうしても厳しいなあ・・・と感じたら、頭を切り替え、「今回は下見!」と、開き直って写真撮影すれば良いのです。

それも後々、良い思い出となり、ネタ話しになります。

まずは第一歩。やれてもやれなくっても、まずは表に出てみましょう!

Good luck guys!