皆さんこんにちは。
今回は、久しぶりにバスキング(路上ライブ・ストリートパフォーマンス)について語ってみたいと思います。
バスキングについての記事は、URL https://oyabinbin.com/tag/busking/ でまとめてご覧いただけます。
前回のバスキングの記事は、目的やチップについて語ってますので、ご興味のある方はぜひコチラもご一読頂けたらとおもいます!
まず、はじめてお越し頂いた方にご説明すると、私は英国でバスキングを10年以上やってきましたので、私のバスキングのノウハウは、基本的には英国、ロンドンでの話しを中心に語っております。
また、私のバスキング仲間からの情報なども参考にしている内容もありますが、基本的には、ヨーロッパのバスキング事情はどの国も非常に近いものであると感じております。
コチラのサイトでのバスキングアドバイスは、基本的に海外で行ってみたい初心者の方に向けてお話しを進めておりますので、よろしくお願いいたします!
今回は、バスキングを行うための準備のひとつとして、「準備すべき必要なもの」について、お話しをしようかなあ・・・と、思ったのですが・・・
ミュージシャンが自身の楽器演奏、または歌唱を披露する際に準備しなければいけないものは何か。
そんなことは、ミュージシャンの方や、ミュージシャンを目指している方でしたら、基本的にはご存知ですよね。
なので、あえてここで題に揚げるほどの事ではないかなあと・・・(笑)
取り急ぎ、この章の流れとして、一般的な必要最低限な準備物の例をあげるとします。
私の場合はボーカル、もしくは弾き語りスタイルですので、例えば「ステージ」で演る際に持参するものは、楽器、ライン用のケーブル、ギターのピックアップ、ギターピック、チューナー、そして、環境に応じてマイクの持参、という感じです。
プラス、演奏する会場に対して、音響設備や備品の事前確認ですよね。
マイクスタンドの数や(アコースティックギターの音をマイクで拾う方は、マイクスタンドが2本必要ですよね)、私はスタンディングスタイルなので使わないですが、椅子を使う弾き語りスタイルの方は椅子の確認も必要です。
まず第一に、会場へアンプやPAの設備についての事前確認は必須ですので、そこで例えば椅子があるかとか、どこまでこちらで持参すべきかを確認するといいですね。
バスキングの場合は、私は「生歌&生演奏」でやっておりますので、ギター1本があればOKです。他に何も必要ありません。
アンプやマイクなどの機材を使うバスカーは、アンプやマイクに加えて、マイクスタンドも必要になります。
譜面は私は使わないので(これの理由についても少し後に語ります)、譜面台は必要ありませんが、必要な方は、携帯しやすい軽量タイプの譜面台を用意して持ち歩く方がベターです。
日本の音楽会場の設備というのは、すごく整っており、そういったほとんどの設備や備品が揃っています。安全な国、日本では、それらの盗難の心配もほとんどありません。
しかし、海外での場合の会場設備は、PAなどの最小限の音響設備のみ、と思った方がいいでしょう。
ドラムセットを置いてない会場も結構ありますから、海外でのドラマーさんにとっては、ドライブライセンス(運転免許)は必要不可欠。ライブの際は、ドラムセットごと出陣するのが普通です。
海外では、マイクすら常備していない会場もあります。
もちろん、設備が完璧に揃っているところもありますし、基本的な必要最低限ものだけ、スピーカー以外全く置いていない(PAシステムすら微妙な)ところもあります。
その会場や場所によりますが、基本的には、海外では盗難防止などの視点から、施設にはほとんどの備品がないと思った方が良いです。
普段は一番荷物が少なくて済むボーカリストさんも、王道のライブ用マイクですがSUREの58くらいは購入しておきましょう。
マイクあるよ〜と聞いてたのに、蓋を開けるとMC用しか置いてない!なんて場所も存在しますからね。
ちなみにスタジオ設備で置いてあるのは、海外でも58が多いです。
もし1本目のマイクを買う、ということであれば、自分の好きなスタイルやメーカーのものなど、格好から入るのもいいですよ。最低限の機能は確認した上で、となりますが。
自分が楽しくなるというのが前提です。見た目から入るのもアリ!
そんなわけで、持参するものについて話すと、こんな当たり前のお話しで終わってしまいます。
では、逆に、海外でバスキングをやるために、「準備の必要がないもの」って、何でしょう?
まずは、ストリートの概念を捨てる
まず最初に、要らないものひとつ。
海外でバスキングをやるにあたって、日本でのバスキング(いわゆる、ストリートパフォーマンス)の概念を捨てなければなりません。
海外でバスキングをやること、それはつまり、路上を行き交う通行人の方達への、BGMのプレゼントです。
バスカー、つまり、ミュージシャンが主役ではありません。
主役は、通行人の皆様なのです。
中には、あなたの音楽や歌を聞きたくない気分の人だって、バスカーが演奏しているその通路を通るのです。そう言う人にも、愛される・・ことを目指すのではなく、あくまで「嫌われない」ように演奏するのが大事。
バスキングの目的が、腕慣らしであったり、根性試しであったり、修行でも構わないのです。
間違ってはいけないのは、そこは「自分というミュージシャンの宣伝の場所」ではないのです。
基本的な、海外でのバスキングのスタイルは、以下の記事にも軽く触れておりますので、合わせてお読み頂けたらと思います!
海外で、大勢の外国人(海外に渡れば私たちが外国人ではありますが)が行き交う路上で演奏するわけですが、あなたの音楽を耳にしたり、バスキング姿を目撃する通行人の方達は、海外でのバスキング文化や、そのスタイルに慣れ親しんでいる人たちです。
いきなり、「俺の新曲を聞いてください!」「僕はこういう者です!」という雰囲気全開でバスキングを行なっていたら、通行人は確実に「引き」ます。
だって、彼らにとってバスカー達は、「自分たちが通路で楽しくなるような曲をやってくれてる人たち」なのですから。
「俺を見てくれ!」は、結構な場違いになってしまうんですよね・・・
日本では、バスキングは演奏の修行の場でもありながらも、自分のファンを増やすためのプロモーションの場所でもあります。
以前の記事でもお伝えしたように、海外では、バスキングはバスキング、プロモーションは、プロモーション。別です。
海外の路上でプロモーション風のそれをやろうとする場合は、カウンシルの許可を取り、大きな設備を持ち込み、ステージを設置する。セット時間を決め、セットリストを決め、それでようやく、日本と同じスタイルのストリートパフォームが成り立ちます。
しかし、そこまでくると海外ではもう、野外ライブ、フェス、なのです。
バスキングというのは、ストリート上で演奏するもの。それも、ごく自然に。
海外では、通行人へ、路上へと、万人が不愉快なく耳にできるようなBGMとしての音楽を届けるためのものが「バスキング」。ただそれだけなのです。
日本では、ストリートというジャンル、そしてそこからスターへの階段をのぼることができるかもしれない、そんなイメージをいち早く確立したゆずをはじめ、数々のミュージシャンがバスキング(ストリート)を経験し、そこからファンを増やし、メジャーシーンへ進んでいます。
しかし、それは日本のスタイルであると思ってください。
厳しい現実を語りますと、海外で、バスカーからスターの階段を駆け上るのは、ほぼ、不可能です。バスカーは、バスカー。
著名なミュージシャンでバスキングを経験している元・バスカーも大勢います。しかし、ことバスキングをやっているときは、バスカーとして徹しており、それを引退し、そこから離れた際にこそ次のステップに上がります。
バスカーと、バンド、その両方の顔をきっちりと分けて活動しているミュージシャンもいます。
しかし、日本で「ストリートで人気が出てスターに」というのが存在するような、「バスキングをきっかけにスターへ」「バスカーとして有名になった」・・・と言うのは、あまりないんですね。
しかし、海外でのバスキングは立派な仕事としても、すでにジャンル化されていますから、誇りを持って皆がバスキングをやっています。
それは、自分というミュージシャンや自分の曲を売るためではなく、通行人が安心して聞ける音楽を提供するためだけに行っているのです。
日本の言葉で言えば、まだ、昭和を彷彿させるストリートスタイルである「流し」の方が、海外のそのイメージに近い?かも、しれません。
「流し」は基本的に、音楽いかがですか〜、というスタイルが基本ですからね。そこで、お客さんのリクエストに答えて演奏する、というような。
ただ、流しは自ら「どうですか〜」と、演奏を営業するわけですから、海外のバスキングと全く同じスタイルというわけではありませんが。
海外では、自分を売り込むのは、あまり好まれません。そこ(路上)は公共の場であるということが最優先。
誰かが「なになに!?」と、足を止めてしまうバスカーのパフォームよりも、万人がスムーズに通路を行き交うことができるような、音がその場所の空気のように、景色のように溶け込んでいることが、何より理想であるのです。
下世話な話しではありますが、通行人が主役とするように演奏しない限り、「チップ」も入りません。
多くの海外のバスカーが、そのバスキングのみの演奏で暮らせるような収入を得ているのも、自分を推すのではなく、通行人に合わせる演奏をしているからです。
少し、別の例を挙げてみます。
JBに続く、ファンク音楽流通の貢献者である、Pファンクの総帥ジョージ・クリントン。
彼は、「バンドで路上演奏をしても誰も聞いてくれなかった。だから人々の目を引くために、衣装をどんどん奇抜にしてゆき、アンプでバカでかい音をぶっ放した。そしたら、人が集まってくるようになった」というようなコメントを過去のドキュメントVTRで語っています。
しかし、それは成功例なのです。
そして、ジョージクリントンは、初めからバスキングというカテゴリーではなく「プロモーション」というカテゴリーで行なっていたということ。
基本的には、海外で、こと「バスキング」を行う際に、アンプででかい音をぶっ放したら、すぐにクレームが入るか、ポリスがやってきます。
皆さんに「海外でバスキングをやること」を紹介しているこのブログでは、ジョージクリントンのバスキング方法をおすすめすることはできません。(笑)
それは一般的な海外でのバスキングのスタイルとはかけ離れていますし、場所を3分で退散させられてしまうのでは、目的は果たせませんよね。
さて、バスキングをやるにあたって、具体的に準備の必要がないもの=持参する必要の無い物が何なのか、なんとなく気づきましたか?
それは、自分が主役と思って挑む気持ち、自分のプロモーションのためという目的です。
それらは必要ありません。
目立たないようにやってください。目立たとうと思わなくても、音楽が良ければ嫌でも気に留めてもらえます。
もちろん、それらをもってバスキングに挑んでも構いませんが、クレームが来たり、変な輩に絡まれないうちに短時間で退散した方がいいですね。チップも、少ないと思いますよ。
今回は、「概念」ということで、気持ちやモチベーション的な内面をお話ししましたが、次回からは「不要なもの」について、さらに掘り下げていきたいと思います。
ご一読ありがとうございました。