今回は、Jam(ジャムセッション)についてお話しします。
皆さんは、ジャムセッション(以下、ジャムと省略します)に参加した事はありますか?
これ、オススメです!何がオススメって、ステージで演奏できて、オーディエンスがいて、修行の場にもなって、さらにミュージシャンシップも広がる。
そして、最大のポイントは、素人、プロ、技量に関わらず参加できて、ライブ・コンサート気分も味わえると言うところ。
まだ参加してない!って方は、ぜひ、一度お試ししてみてください。
このブログでは、主に海外(基本的にイギリス)での音楽事情を語っているので、ジャムに関してのトピックについても、「イギリスでのジャム経験」から、お話しを進めたいと思います。
海外旅行の際に、ぜひ体験してほしいです!
以前に書いたバスキングの記事の中で、「海外で記念演奏にトライするなら、ジャムセッションの参加をお勧めします」と書いた事があるのですが、その理由はなんと言っても、
- 新顔でも、飛び込みで演奏に参加できる。(予約いらず!)
- 屋内であり公認のライブ・プレイスなので安心して演奏できる。
- 現地交流も楽しめる。(英語のお勉強にもなる!)
- ほとんどが飲食可能なお店で行われているので、そこで現地のフードを味わうのもアリ。観光気分、その雰囲気をリアルに味わえる!
- ちゃんとしたステージで、オーディエンスもいるので「海外で演奏してきた」と、堂々と言える。
こんな感じが、旅行者にジャムがお勧めしたいところです。
つまり、現地人だろうと日本人だろうと、誰でも参加出来て、さらに、公認のライブプレイスなので、誰かに邪魔される必要もなし、遠慮する必要もなし。
安心して自分の演奏ができます。
もちろんジャムなのでその演奏に金銭も発生しない。
必要なのは、その店、その店で決められたエントランス・チャージだったり(エントランスを取らない店の方が多いです)、飲食すれば飲食した分の料金を支払うだけです。もちろん、ジャムが行われるお店は比較的チープなプライスで飲食が可能です。
また、その演奏技量は問われません!素人でもプロでも、誰でも気軽に参加出来る、それがジャムの良いところです。
ただし、最低限「周りの演奏についていける」ことが必要です。
では、少し、ジャムについておさらいをしてみましょう。
ジャムセッションって何?
今回の記事では、初歩的な事、「ジャムって何?」と言うところを、ざっくりとお話ししたいと思います。
ミュージシャンの皆様は当然ながらご存知だと思いますが、あえて初心者の方へ向けて、改めてご説明します。
「ジャムセッション」とはつまり、ミュージシャンが集まって即興演奏をする事です。
決められた楽譜や構成通りにきちっと演奏するのではなく、型にはまらず、「せーの!」で演奏をはじめ、自由に展開していく事が、ジャムセッションになります。アドリブと言う表現もありますよね。
音楽好きのマスターが運営するバーや、ライブハウス風のお店なんかで、「本日Jam Day」みたいなイベントの看板が掲げられている事がありますよね。
「今日はミュージシャンが自由にライブ演奏して盛り上げる日ですよ〜」と言う事なのです。
そしてまた、そういった「プレイス(場所)」がジャムを指すわけではなく、レコーディング中にスタジオで即興でアドリブで展開していけば、ジャムのそれに当たります。
ミュージシャンの友人同士が家の中で「なんか演ってみようぜ!」と言うのも、立派なジャムになります。
即興で「自由に演奏する事」、それがジャムなのです。
例えば、バンドマンならば、このジャムをきっかけに、いいね!いいね!とバンドで盛り上がっていき、なんだか素敵なメロディーやアレンジに巡り合えちゃったりして、新しい曲が誕生する事だってあります。
また、ジャムのような即興演奏を繰り返していくうちに、自分の演奏(アレンジ)の引き出しが増えて行き、そのうち新しいフレーズがどんどん出てくるようになったり、新人奏者であれば、周りのジャムに追い付こうとしているうちに、知らない間に腕が磨かれていたりします。
ちなみに、ジャムでは、自分よりテクニックが上の奏者と組んでセッションする事をお勧めします。
ついていけなくって悲しい思いをしたり、恥ずかしい目にあうこともあるかも?しれません。
しかし、技量のある奏者と組む事で、周りが自分を引き上げてくれる効果があります。
うまく行った時は、「気持ちいいー!」って、なりますよ!
「こんなに自分ってうまくやれるんだ!」なんて、勘違いしそうになっちゃったりします。
それって、実は技量の高い奏者がうまく全体をまとめてくれて、(自分がやりやすいように)合わせてくれているからなんですよね。
その緊張感を繰り返しているうちに、自分もそのレベルへと近づいていくようになります。
逆に、自分が容易にやれるような、(自分の腕が一番目立つような)セッション相手と組むと、楽しんでやることはできますが、実は成長は期待できません。
同レベルで、やれる範疇でやる。それは、仲間内では楽しいことですが、その上を見ることなく満足してしまうほか、リードをしてくれるバンマスも自分と同じ世界しか見ていないということになります。
自分よりスキルのある演奏者とステージに立つのは、自分の不甲斐なさを知ったり悔しい思いが残ることも多いと思います。
同レベルでやるとそういった辛さはありません。
しかし、10回に3回でもいいので、強者と無理やりジャムを組ませて頂いた方が、自分のためには良いと思います。
成功した時の気持ちよさ、本当にハンパないですよ!
恥ずかしい思いも沢山するんですけどね。(私も経験者かつ、今もあるあるです。汗)
ジャムの戦場、キング・オブ・ソウルのショウタイム!
ジャムは、何も日常の練習やレコーディング、皆の集まりの場だけではありません。
ライブ、コンサートが丸ごとジャム!その即興性こそが楽しみである音楽家のライブは沢山あります。
有名なところでは、キング・オブ・ソウルこと、ファンクの巨匠であるジェイムズ・ブラウン(以下、JB)のショウでおきまりのようにある、「セッション・タイム」ですね。
これが、怖いんですよ。(笑)
JBのツアーに参加すれば、おそらく、世界中のどのバンドでもやっていけるだろうと言う。(笑)
2006年に惜しまれつつこの世を去った、JBですが、お亡くなりになったまさに2006年もツアーを行っていると言う、晩年もステージに現役で立っていたミュージシャンでした。
私も、3回ほど、生のJBショウを観に行ったことがあります。
まず、そのステージを見てびっくりするのが、ドラムセットが3つあるんですよね。ドラマーが3人。その時点で驚きなのですが・・・
ファンクですからバンドも大所帯。
ギタリストは3名、ベーシストは2名、ホーンセクション、ピアノにパーカッションにコーラス。
更に、JBショウは、中盤で「ソロ・ディーヴァ」を招き入れての「セッションタイム」を行う事でも有名です。(まあ、ここのジャムが一番怖い・ハラハラしますけどね)
昔から変わらず行われる、定番のイントロデュース(司会者が”レディース アンド、ジェントルメン!”から入る、おきまりのやつ)でJBが登場。
ステージ、バンドセッションタイム、ディーヴァの登場と女性歌唱ステージ、セッションタイム、倒れ込んだJBに他のメンバーがマントを被せる・・・これらの演出は定番。
彼のショウは、前述のお決まりの定番進行があるだけで、丸ごとジャムセッションと言っても過言ではありません。
さて、そのJBのショウのセッションタイムについてですが・・・繰り返します。これが本当に、怖いのなんのって。
観てる観客の方が怖くなって、JBにアドリブを命じられたミュージシャンや歌手に同情してしまうのだから、よほどです。
JBは、スターであると共に、バンマスでもあります。
ほとんどのバンドや歌手の場合、そのマスターはボーカリストであり、その演奏を中心になって仕切っていると思いますが、本当の指揮を取っているのはやはり演奏者。奏者の中にバンマスがいることが多いですよね。
しかし、JBは中心でボーカリストとして立ちながらも、周囲の音が全て耳に入っており、何かの変化があると、その奏者を「ニヤリ」と、笑い見ます。(睨みます。笑)
彼は、バンドがリズム一つ外すことを許しません。
JBは、そのステップのリズムでテンポを指示し、ステップと手、そして体の向きで細かに指揮を取っているのです。
彼の音楽であるファンクは、基本的にはループする構成なわけですが、JBの体の動きでだけで、その音楽の抑揚が展開されて行きます。彼の体全体が指揮なのです。
バックバンドは、JBの踏むステップ、そして彼の手の指す方向から目が離せません。
この辺だけ聞くと、「まあ、普通のジャムじゃん?」なんて、ジャム経験者は思うのだと思いますが、JBの怖いのが、その指示。
普通は、アイコンタクトを取りながら気持ちを合わせてバンドの演奏展開をしていくと思うのですが、JBは、指揮は強制的。(笑)その指示も急であり、しかも、それを本番のショウでやっちゃっているところです。
どんなに長いツアーでも、そのコンサートの日、一日一日がジャム。全て違うジャムなのです。
「おそらく」なのですが・・・
奏者が(今は自分に回ってこないだろう・・)と言うようなタイミングで、あえてその奏者に(指示を)振っているような気がしないでもありません。(笑)
それくらい、奏者が「ビクッ!(え、今?!)」ってなってるんですよ。
JBと2時間、3時間のショウを丸々やってるバンドがそうなのですから、そのショウの中間でゲストとして招き入れられたお抱えディーヴァ達はもっと大変なプレッシャーです。
例えば、スキャットを始めますよね。延々とスキャットを終えて、ディーヴァがJBに返そうとする。すると、JBは(もっと歌え)と言うような指示を、アゴで出します。
ディーヴァは少し躊躇しながら、再びスキャットを始めます。
そしてこれ以上ないくらいに唄い回した後に、JBに振ろうとします。しかし、JBは再び、(まだまだ歌えるだろう?)・・・のような指示を、ニヤリとしながら出すのです。
最後には、困り果てたような顔になったディーヴァから、JBが(仕方ねえな、じゃあ俺が歌ってやるよ)と、言う素振りをします。
そして、JBがソロを受け取るかと思いきや・・・すっ!と、JBの後方にいる奏者をいきなり指し、(やっぱりお前ソロやりな)と、指示を出すのです。(笑)
凄まじいですよ、本当に!
ちなみに、JBのバンド演奏する人たちは、完璧です。完璧でないと、キングからのお呼びもかからないでしょうけども・・
そんな人たちを、リハーサルでしごきあげて完璧な状態にした上で、さらに本番でもまだまだ上へと引き上げているのだから。
それをオーディエンスが観ている本番でやるんだからね・・
怖いったらもう!(笑)
観てるこちらがミュージシャンの場合は、その、バンド達の切なる思いがひしひし伝わってくるようで、なんだか(いろんな意味で)凄く深いショウを魅せられてしまった気分になります。
普通、ライブ鑑賞をした後って「あのステージに自分も立ちたい!」と、興奮するものじゃないですか。
JBのショウを見た後って独特で、そういうドキドキとは違った、心臓バクバクといった感じです。(笑)生半可じゃないプロの世界を見せられたような。
ちなみに、JBのショウは、3時間くらいは余裕であった記憶があります。
もうね、どこまでが決められているセットリストなのか、全くわからない。(笑)
一応、2時間という基本の時間帯でやる予定ではあるらしいのです。しかし、JBが止めないので終わらない、という噂を耳にしたことがありますね。ほんとかどうかわからないけど・・・ありそうです。
ファンクのステージって、そういうのよくありますからね。いつ終わるんだ!って、運営側がヒヤヒヤするっていう。
でも、それだけ繋げられて魅せることができるって、凄いですよね。
プロ中のプロ、トップのトップ演奏者になっても、その腕試し、ジャムを極めることは果てしない事なのであります。
終わりのない、無限に追求する旅なのです。
まあでも、JBのようなジャムセッションは日常ではまず、ありませんのでご安心を。(笑)
ファンクの頂点の頂点の人たちでも、自らに甘んじず終わりなきところまでジャムで目指していた、という「ちょっと怖い例」でした。
音の交流場には、未来の仲間との出逢いも?
JBのように、かなりの強者レベルでジャムをやるミュージシャン達、そこをプロでやっている方も多くいます。
ジャズミュージシャンは、ほとんどがそうですよね、レコードと同じことはジャズのライブでは起こりません。
また、ジャズの名盤と言われるものには、コンサートのライブ収録が多いです。
ジャムこそが、ジャズの醍醐味とも言えます。
しかし、我々にとっては、ジャムはあくまで音の交流の場。気軽に楽しく参加できるものでもあります。難しく考える場所ではありません。
もし、難しいと感じるなら、周囲のバンドにサポートして貰えばいいのです。
楽しみながら、その実力をつけてゆく事ができ、場数を踏む事でステージ慣れもしてくる。
こんな良い場所を、活用しない手はありません!
バスキングや弾き語りのように、一人で延々と演奏するのもいいです。
しかし、ジャムにはそれとは全く真逆の楽しさ、「皆で音を共有し、共鳴し合う楽しさ」があります。
これから歌う場所や演奏する場所を探していく方は、ライブのようにブッキングやノルマと言うプロセスがなくとも、すぐにでも挑戦する事ができる場所。それも魅力ですよね。
個人的には、弾き語り等で演奏に慣れたら、ジャムに参加して、いろんなミュージシャンの音を聞いたり、人と演奏することを学んでから、弾き語りの舞台へと広げていく方が良いんじゃないかなあと思います。
最初からガッツリ、一人だけでやっていくことを目標にしたり、一人で演奏することしか知らないのは、少しリスクでもあります。
バンド演奏すること・一緒に演奏をする人がいることで、相手の音を聞き、自分の音を知り、リズムを合わせ、音を感じる空間を共有して作り上げることを学べます。
以前に、「メキシコ在住の日本人男性」のギタリストさんとロンドンのジャム会場でお会いした事があります。
私がジャムのステージを終えた後に、「日本人ですか?」と、声をかけられたんです。
「イギリスでジャムに参加しようと思って旅行で遊びに来た。噂で聞いた有名なジャム会場に下見に来たら、日本人らしき方が歌っていたんで声かけました。」と。
海外のジャムに参加するのは心細いこともあると思いますが、そんな風に、日本人が会場にひっそり居ることは結構あるんですよ。
ジャム会場に一人で来ている日本人なんて、音楽に興味ある人以外の何者でもありません。
もし、アジア人風のルックスの方を見かけたら、「日本人ですか?」って声をかけてみて、「一緒に参加してみましょうよ!」なんて話しに発展するのもアリです。
ジャムに足を運ぶ事で、外国人の音楽仲間だけでなく、思わぬ日本人の友人が出来ることもあるかもしれません。
ちなみに、先ほどお話しした「メキシコ在住の日本人男性ギタリスト」さんは、その後、ご縁あってステージのお仕事でご一緒することになりました。
これも、ジャム会場でお互いに演奏していたからこそ、あえてリハやテストすることなく話しが進み、発展したことでもあります。
音楽のご縁って、大事です。そしてまた、「日本ではないどこか他の地」で出会った友人って、繋がりというか、絆がより深くなるような気がします。
音楽の繋がりを広める場として、ジャムの世界に味を踏み込んでみては如何でしょう?
その前に、まずはジャムに行くための準備が必要です。
次回は、ジャム参加のための準備について、お話ししたいと思います。
ご一読ありがとうございました。
ブルーズジャムって敷居が高い?実はブルーズはとっても身近な存在でもあるのです!