物事の終わりに、きちっとケジメをつけるって大事ですね。

終わりよければすべてよし。

本当にそう思います。

改めて、自分も気をつけなければと、つくづく思う今日この頃。

 

All’s well that ends well, still the fine’s the crown.

Whatever the course, the end is the renown.

 

William Shakespeare

“All’s Well That Ends Well” 1603-04.

 

終わり良ければ全て良し。依然として王冠なのです。

どんな経過/成り行きがあろうとも、最後は名声です。

 

-ウィリアム・シェイクスピア

「終わりよければすべてよし」1603-04

 

一般的に訳されている文章ではなく、直訳風にするとなんだかちょっと皮肉な感じですね。実際に皮肉な物語と言われてはいますが・・

 

日本のことわざの「終わり良ければすべてよし」の語源はこのシェイクスピアの一節から来ています。

 

「経過が何であれ、最終的な結果が大事だよ」と、終わりよければの読んで字の如く、ポジティブな言葉として日本では使われています。

 

しかし一方で、最初が肝心なこともあります。

スタートがよければその後もトントン拍子にうまく行くことって多いですよね。

 

仕事の場合は、最初の出だしが良いほど、結果がうまく行く事が多いような気がします。

 

 

以前にお話しした「行動話し」と同じで、ミーティング、ミーティングを繰り返すよりも、さっさと行動を起こし、すぐに進んでいく方が、うまく展開していきます。

結果的に、ゴールにたどり着くまでの時間も節約できます。

 

 

 

あれやろう、これやろうと考えてることって、全く進みません。

言うだけ言っても、行動に移さなければ、意味もなくなります。

 

勢いだけで行動した事の方が、結果的に成し遂げたという感じになってる事も多いですよね。

人間関係でも、最初の印象は肝心です。最初だけは気合入れて、うまく交友関係をつなげた方がいい気もします。

 

しかし、それはあくまで、良い入り口へのきっかけに過ぎないわけです。

こと人間関係においては、最初が良くても後で悪くなったり、最初が悪いのに、後でよくなったりするわけですから、難しいですよね。

 

 

人間関係で最初のスタートが肝心、最初にどう動くか、というのが重要ではあるものの、おかしなもので、最初の印象が悪くて「後が良かった方」が印象が数倍よくなりますよね。

反対に、初対面ですごく感じが良い人が、後々最悪であれば、そちらの方が、悪い印象しか残りません。

 

結論から言えば、最初も最後も、どちらも普通の人だとありがたいんですけどね。(笑)

 

でも、仮に、どれだけスタートダッシュで失敗したとしても、最初に会った時に「変な対応しちゃったなあ」なんて後悔したとしても、最後のシメさえしっかりすれば、それだけ人間の印象って変わるということなのです。

だから、その関係が終わってない限りは、救いの方法っていくらでもあるんですよね!

 

これこそ、終わり良ければすべて良し!なんです。

 

 

初めての「終わりよし」経験

 

「終わり良ければすべてよし」というのを私が初めての実感した時は、10代の時にはじめてバイトした先です。

 

バイト先に、すごく嫌われ者の20代のお姉さん社員がいたのです。でも、すごく美人でしたよ。(笑)

仕事は出来るし、頭もいい頑張り屋さん。しかし、誰に対しても見下すような態度をとっていた彼女。

 

私もちょっと怖くって、嫌味を言われても嫌だから、まともに話しをすることもありませんでした。

 

ある日、彼女が職場を辞めることになった時、職場の誰もが心の中でほっ、としたものです。

 

彼女の退社の当日、当然ながら花束などの用意も無く、誰からも一言の労いもなかったんです。

もちろん、送別会などもありません。

 

彼女は、普段と変わらない1日を終え、その職場を永遠に後にすることになってしまうのです。

 

短時間勤務のアルバイトだった私は、彼女の就業最後の日、彼女よりも少し先にバイトの退勤時間をむかえてその場を離れました。普通に「お先に失礼します」って言って。

でも、帰りの電車に乗った後、何かこう、切ない気持ちが湧き上がってきまして。

 

社員として、一生懸命頑張った職場を退社するのに、誰からも労いもされない。彼女にとっての初めての就職先の思い出が、こんなにあっけなく終わるのかと。それが、生涯の記憶となるのかと。なんかこちらが寂しくなってしまって。

 

私もまだ純粋でしたから。(笑)

 

 

思わず、電車をすぐ次の駅で降車し、周辺の店へ。

バイト代でピアスを購入して、アルバイト先に戻ったんですよ。

 

「〇〇さん、これ、用意してたんです。渡し忘れてたのを思い出して慌てて戻ってきたんですよ!今までお世話になりました。お疲れ様でした。」

 

そう嘘をついて、買ったばかりのプレゼントを渡し、笑顔と握手でお別れしました。

 

たったそれだけのことなんです。

ピアスも、せいぜい1000円くらいのものだったと思いますよ。

 

しかし、それ以降ですよ。

その職場と、そのお姉さんの空気感がガラリと変わったのは。

 

辞めたお姉さんは、職場を去った後も頻繁に「私を訪ねる名目」で旧職場を訪れてきました。つまり、私に「元気ー?」って言いに、ちょくちょく遊びに来るようになったんですね。

 

職場にいた頃はツンケンしていたのに、笑顔でニコニコ現れて、その度に「スタッフ皆でどうぞ」と、差し入れを持って来るように。

 

差し入れなんかもらっちゃったらねぇ〜。嬉しいでしょ。(笑)

当然、周りも「あの人、嫌な人だと思ってたけど実はいい人だったんじゃん」と、急に言い始めるようになりました。

本人も、「また戻りたいなー。やめなきゃよかったなー!」なんて言ったりして。

 

彼女が辞めた後になってから、その場の全ての人間関係が穏やかになったのです。

 

たった一言、親切な声をかけた子がいただけで(当時の私です!笑)その意地悪だったお姉さんの心が解けたのかも?しれません。

 

もちろん私も、そのお姉さんに好かれたおかげで、ずいぶん得をしました。(笑)

 

もし、あのまま私もお別れの言葉すら言わず、誰も何も言わなければ、彼女の印象は皆から「ただの嫌われ者」として残ったまま。そして彼女も二度と旧職場の人たちと交流を持つことはなかったでしょう。

 

その、30分そこらの時間を惜しまなかったこと、当時の自分をちょっと褒めたいですね。本当に思い切ってぶつかってみて?良かった!と思いました。

だってね、怖いと思ってた人ですから。

交流もそんなにないガキがさ、いきなりプレゼント渡したところで、「は?」って言われても嫌じゃないですか。

 

けじめっていうのかな。

物事を何か終えた時、その事に対しての喜びや労いを言葉で伝え合うこと。そして挨拶。

これはけじめだと思います。

 

仮に何か嫌な過程があったとしても、最後の最後だけは、笑顔で終えることで全てが良い思い出と一瞬で変わります。

 

そして、その場の空気がもたらすもの、というのもあります。

ちょっとピリピリした仕事現場だったから当たらず障らず退散・・・と、みんながみんな思っている場合や、引っ込みがつかない場合もあります。

誰かがきっかけを作るというのも大事なのかもしれません。

 

 

 

一手間を惜しまず、挨拶をすると得をする!

 

もちろん、逆もありますよ!

 

終わりや別れにきちっとけじめをつけなかったことも。

 

若さゆえの、面倒臭いからいいや、みたいな感じですよね。

最後にケジメをつけない、ちゃんとした挨拶をしない。それって多分、面倒臭いやっていう、それだけのことだったと思うんです。

 

でも時間が経った後に振り返ると、自分の方が後悔しますよね。何でお礼を伝える一手間を惜しんだんだろうと。ガキだったなあと。

 

これまた逆の立場で、親切心で物凄く協力したのに、不義理をされたこともあります。

自分がその立場になると、やっぱり、イラッ、ムカッ!としてしまうわけで。もう二度とあの子は手伝わない!と、思っちゃうわけですね。

しかし、お互いに最後さえうまくいけば、挨拶ひとつでもきれいに終わればそんな嫌な気持ちなんて残らないものです。

 

例外で、挨拶も人情も無く物事を終えたっていい時だってあります。その相手が、自分に害を及ぼすような人間であれば、挨拶やケジメなんかよりも、そこから逃げることの方が正解。

個人的な意見では、嫌いな人とは付き合う必要はないと思ってます。ストレスの素は、好きでもない人間と無理して付き合うことですから。

 

でも、一緒に何かに向かって頑張ったとか、相手に時間を割いて頂いたとか、例えばご馳走になったとか手土産をもらったのようなちょっとした事でもね。

少しでも相手にお世話になった事実があるのならば、別れの際には感謝を伝えるべき。伝え忘れたなら、後でメールを送るだけでも違います。

 

その少しの手間を流してしまったなら、再会という希望は消えます。

もしかしたら、未来のその先に、その人との何かの可能性があるかもしれません。

それがもし友達であったならば、その縁は確実に遠くなってしまいます。

 

面倒臭いなあ、という程度のその場の軽い感情で、その一手間を惜しんでしまったら、後で後悔するかなと。

 

そう思っていても忘れてしまう時だってあるわけですが・・

その時は、気づいた時に伝えればいいだけのことです。遅くても、次に会った時に「あの時はありがとうございます」って言うだけでも、メールするだけもいいんです。

 

悔やんだ時には時間が経ち過ぎちゃって、連絡しても相手から何もレスポンスはこないかもしれません。

その時こそは、ああ、そういう相手だった、ハイさようならと、スルッと忘れる。

きっと、相手の方が後で恥ずかしい思いになります。(せっかくあの時、連絡来たのに、ムカついちゃって無視しちゃったなあ、もう連絡取りにくいなあ)と。

 

自分が最後にポジティブになることで、自分のモヤモヤはなくなります。

相手との縁を再開させることができなかったとしても、伝えることだけ伝えるのは悪いことではありません。その誠意はどこかで伝わってます。

 

せめて、自分の気持ちだけはスッキリさせた方が、お得です。

 

現在から一番近い記憶と情報は大きなインパクトを与える

 

一番近い過去の記憶や情報は、私たちに一番大きなインパクトを与えます。

 

過去がどれだけ惨めでも、昨日奇跡が起これば、明日からは素晴らしい日になるような心持ちになります。

 

過去にどれだけ華やかな栄光があっても、1週間前が地獄であれば、明日も明後日も地獄なのではと思ってしまいます。

 

極端に言えば、人間関係も、過去の関係はどうでも良いのです。

明日からの人間関係を左右するのは、その相手に対する一番近い記憶と情報です。

 

これが例え嘘の情報であっても、私たちはすっかり騙されてしまいます。

 

本当はすっごく嫌なクライアントで凄く嫌な仕事で、もう二度とイヤなんだけども、って場合でも、最後は物凄く明るい笑顔で感謝を沢山、相手・先方に伝える。

そんなことされたら、された方は、嬉しいとしか感じません。(笑)

また仕事を依頼されるかもしれませんから、嫌な仕事だったら断るのも辛いかもですが(笑)

でも、印象はすごく良く残りますよね。その相手だって、もしかしたらプライベートでは凄い良い人で、仕事を離れて友達になるってこともあるかもしれません。

 

逆に、「こちらはすごく楽しめたと感じてるんだけども、相手にお礼や労いを言い合う時間が取れなかった。ま、次回会った時でいいか。」なんてことがあったとしたら、相手の捉え方次第では次に会うチャンスを失いかねません。

 

最後だけは重要です。

 

それは、職場や学校、場所や旅先など、そこを離れる際の大きな別れの時だけではなく、普段の茶飲み友達とのバイバイも同じかと思います。

 

別れるタイミングの、その時の印象。

 

これだけが、自分が、最後の最後に相手からジャッジされる判断基準だと思って大事にした方がいいです。

 

 

別れの大切さを寅さんに学ぶ

 

普段の小さな別れから大きな別れも大切ですが、人生の別れも同じですよね。

 

「男はつらいよ」の寅さんは、成れの果てのような(すみませんこんな表現をして)人生を送っている渡世人ですが、山田監督の別れの画き方というのが、地味に素晴らしいです。

 

そこも映画で伝えたいメッセージの一つなんだろうけど、あくまでさりげなく「別れの大切さ」をえがいているところがいいですよね。

 

振られてばっかり、喧嘩ばかりして、勢いで旅の空へ出ていく寅さん。

身勝手に見える時もありますが、実は、別れのけじめはきちんとしているのですヨ。

 

(喧嘩をしていない時に旅立つときは)「そろそろ旅へ出るからよう!」「先生も達者でな!」と必ず相手に伝えます。

 

喧嘩してプイッと別れたり、無言で消えたりした場合でも、必ず「反省」の文字に加え、相手の身を案ずる内容の書き置きを残します。

そして、必ず旅先から、反省、謝罪、そして家族を思う言葉の入った葉書を送るのです。

映画の最後をシメるシーンですね。

 

喜劇であり悲劇な物語なのに、ハッピーな気持ちで幕を閉じる。

 

それは、寅さんが人との別れを大事にしていると同時に、映画のラストがとても美しいからでもあります。

 

あと、寅さんは、葬式の準備に力を入れたり、先祖や世話になった人の墓参りだけは欠かさないという一面もあります。シリーズのマニアであれば、誰でも知ってる有名なことですよね。

 

旅暮らしの寅さんは、毎日が一期一会の出会いです。

 

旅鴉の寅さんは、いずれは「俺は出ていく旅の空」。

いつかは別れが訪れる事を感じながら、その一瞬一瞬の時間を大切に、馬鹿をやりながら精一杯楽しみます。

 

そんな寅さん、身近な人間への義理は欠かしません。

世話になった親分が旅立ったり、仲間が旅立ったらその女房子供の心配をし、どこにいようが遠方まで最後のお別れに行くのです。

 

後でフォローするとはいえど、喧嘩してプイッと出ていくことも時にある寅さんですが「最後(最期)の別れ」だけは、何よりも大事なこととして考えている様子がうかがえます。

 

別れを日々惜しみながら生きる寅さんだからこそ、様々な別れの場がいかに大事であるかをわかっているのでしょう。

 

 

 

私たちも、どんな場面でもどんな場所でも、最後の挨拶や最後のけじめは大事にしたいですね!

 

ご一読ありがとうございます。