皆さん、こんにちは。
海外でバスキング(路上ライブ・ストリートパフォーマンス)をやってみたい!という方へ、個人的な経験から、準備やその心得的なアドバイスを書かせて頂いています。
日本国外でバスキングに挑戦したい皆さん、準備は進んでいますでしょうか?
今回のトピックは、バスキングをするための準備に「不要なもの」です。
これまで、海外における「バスキングに必要と思っていた不必要なもの」の一つとして、マインド部分について重点を置き、お話ししてきました。
このトピックの以前の記事、1〜4話まで、ご興味のある方は、以下(1)からご一読頂けたらと思います。
これまでお伝えした「不要なもの」をまとめると、以下になります。
- 日本でイメージしている「ストリート(路上ライブ)」の概念
- プロモーション(自分の売り込み)
これらは、どちらかというと、具体的な準備のプロセスとしての不要部分、というよりも、準備のための(実は不要である)思考、という事ですよね。
バスキング(ストリート)と聞いて、単純に「路上でライブすること」と思えども、そのスタイルは、日本国内と国外では大きく違います。
また、スタイルだけでなく、その意識においても多少の柔軟な変化を持つ必要があり、その理由には文化背景の違いというものが存在するという事を、お話しさせて頂きました。
それでは、これまでのマインド部分の2つに加え、実際の準備ということを踏まえて、改めて「不要なもの」をまとめてみましょう!
バスキングに不要なもの、5つ
「必要だと思っていた不要なもの」をまとめると、以下の5つになります。
- 日本でイメージする「ストリート(路上ライブ)」の概念
- プロモーション(衣装や、売り込み資料、演奏場所周りの装飾、物販等も含む)
- MC
- セットリスト
- 譜面台
多分、これらのどれもが、ライブなどで普通に準備されるものかと思います。
実際には、海外でのバスキングでは、これらのどれも不要です。
・・・と、いうよりも、準備をしても無駄になります。
「セットリスト」「譜面台」が不要という部分を見ても、ギターの弾き語りのバスキングをイメージしていると思いますが、はい、これら「不要なもの」の4つめと、5つめは、楽器奏者を前提でお話ししています。
もちろん、この二つが最初から全く準備の必要のないバスカーもいるわけなのですが・・・
補足として、「楽器は何がいい?」「アンプやマイクはどうなの??」という部分も、別途お話ししていますので、宜しければこちらの記事もどうぞ!
演奏間のMC、トークは不要!
それでは、不要なもの3つめ、いってみましょう!
「概念」、「プロモーション」に続く三つめ。
「MC」です。
これは、これまでの話しに関連してきますので、お分かりですよね!
はい、全く必要ありません。
だって、「バスキング」とは、通行人の皆さまへ向けて、快く通路を行き交っていただけるようなBGMを提供するお仕事ですから。
そこは、自分のステージではなく、公共の場であり、通行人の皆さまの歩く場所を、謂わば勝手にお借りして演奏しているわけです。
そこに対価は発生しておらず、下手をすると「別に音楽なんて聞きたくもないよ!」と言う人や、何か嫌な出来事があって、イライラしている人だって、自分の演奏する目の前を通るわけです。
とはいえ、バスキングは街の景色の一部であり、文化でもあります。引け目を感じる必要はなく、求められるのは、音楽。演奏を続けることです。
世界でひとつしかない、自分ならではの「デュークボックス」として、演奏や歌を途切れさせることなく、目の前を行き交う皆さんに提供してあげてください。
間違っても、
「はじめまして。僕は日本から来た〇〇です。次の曲は、僕が高校生の頃に作った曲で、インスピレーションを受けたのは・・・」
「ちなみに、来月、〇〇でライブをやります!よろしく!」
なんて、MCを始めたりしないでください。
誰も聞いてくれないどころか、妙な目で見られます。
以前の記事でも書いたように、残念ながら、その通路を通る時点では、私たちバスカーに興味を持っている人は誰一人いません。
それが何者なのか、どんな名前なのか、どんな曲をやるのか、どんなトークをするのか、通行人には全く興味がないわけです。
そして、演奏を「止める」と言うことは、どのような状況でもマイナスです。
MCで演奏を止める、そんな意図的な事はもっての他ですが、必要に迫られた場面でも、通行人の方は容赦なく突っ込んできます。
例えば、ギターの弦が切れて、交換せざるを得ないとき。パパパッ!と弦を変えようとしているにも関わらず、「演奏しないの!?」と、通りすがりの人からすかさず催促が入ります。
以前私が、弦が切れてしまって交換しようと思ったその時に、通行人が乱入してきて私と一緒に歌い始めたため、結局、一本切れたまま、弦の交換をせずにそのまま2時間演奏したことがありました。
一本くらいならば諦めて演奏続けるのも、どちらかと言うとアリかもしれません。(笑)
あと、路上で演奏していると、思わぬところで友人や、知人に会ったりしますよね。
そうなると、「久しぶり!」となり、少しは手を止めて2〜3分話すわけです、バスカーも人間ですから。
それでも、「話し込まず、演奏をするべきだよ!」とか、「手を止めてると稼げないよ!」など、見知らぬ通行人から、ビシバシとツッコミが入ります。(笑)
偶然バスキング先で遭遇した人の中には、自分が本当に会いたかった人もいるわけで、そうなると私も、演奏を止めて10分くらいは立ち話しをしたいわけですよ。(それをきっかけに休憩も兼ねて。笑)
でも、大抵は、そう言う感じのツッコミが、通行人の方々からバンバンと入るため、その状況を察した知人の方から「邪魔しては悪いのでそろそろ・・」と、2〜3分で去ると言うところでしょうか。(笑)
(いやいや、行かないで〜!もう少し話そうよー!涙)と、心の声が叫ぶときもあれば、チップの入りが良い時なんかは、逆に、(ほっ。)とする場合もあるのです。この辺はご都合主義で失礼。(笑)
そんな感じなので、例えば、応援したいとか、オファーをしたいと思ってバスカーに興味を持ってた人であれども、その場ではあえて話込まずに、即座に退散すると言うのが普通なのです。
応援スタイルが若干違う、海外のバスキング事情
日本でのストリートパフォーマンスでは、BGM的にさらっと街の景色に溶け込んだパフォームもあれば、ファンや、興味を持った人が立ち止まり、バスカーの周りを囲んで声援を送り、それに対して、バスカーが「どうもありがとう!」など、トークを返しているシーンもありますよね。
路上で演奏している人を見かけて、それに興味を持ったら立ち止まって聞き、その「ショウ」を見届けると言うのが、日本での応援スタイルであり、それが最もミュージシャンにとって喜ばしいことですよね。
海外だと、立ち止まって声援を送ることが、「邪魔をしているかもしれない」と言う認識が、通行人にはあるのです。
応援の印として、チップを落として立ち去ったり、たまに、かなり遠くの方の陰で、聞き続けている人なんかもいます。
おそらく、(邪魔しないように・・・)と言う配慮だと思うのですが、その様子は、かなり微笑ましいですよ。
そういった方は、20分〜1時間ほど離れた場所で聞いており、十分に音楽を楽しんだあと、立ち去る間際にチップを持って近づいてきて、一言声をかけてくださいます。
日本人の方でも、現地で暮らしてる方はそんな様子の方が多いですね。かなり離れた場所(おそらく視界に入らないようにと配慮したような場所)で聞いており、立ち去る間際に声をかけられて、お互い、「あっ、日本人?!」みたいな。(笑)
バスキングが街の景色として、忙しく路上を行き交う通行人の皆さまと、ごく自然に共存していけるのは、バスキングが「特別なこと」つまり、「特別にやっているライブやショウ」と思われている訳ではなく、人々にその景色が当たり前の事として捉えられているからです。
そのためには、最低限、公共の場で行なっている意識を持ち、反対に通行人は、バスカーが公共の場に音楽を提供してくれている、それを生業にしている、と言う部分をリスペクトしているため、邪魔しないようにと、少し距離を置いて聞くわけです。
バスカーと通行人、互いの状況への気遣いや配慮が、想像している以上にあるんですよね。
勿論、予めプロモーションとして意識した、路上ライブとなれば別ですよ。海外であろうとも、「路上ライブだ!」という様子であれば、人が集まって、立ち止まって聞いています。
そうですね、バスキングは、ざっくり路上ライブのカテゴリーになるとは言えども、路上ライブ、という表現は該当しないのかもしれません。
バスキングは、バスキング、ですね。
次回は、不要なもの4つめの「セットリスト」についてお話ししたいと思います。
Enjoy your summer and busking!
ご一読ありがとうございました。