皆さんこんにちは。
国外でのバスキング(路上ライブ・ストリートパフォーマンス)活動を目指す、ビギナー・ミュージシャン向けに、初歩的な海外バスキング事情をお伝えしています。
ここでは、バスキング(ストリートパフォーマンス)で、準備が必要と思っていたけど「実は必要のないもの」についてを語っていきたいと思います。
前回の記事は、以下からご覧下さい。
さて、早速ですが、今回のお題は「セットリスト」です。
ライブの準備には欠かせないものですね!
セットリストとは、その名の通り、ステージの曲構成(セット)をリストアップしたもの。
日本では「セトリ」なんて、省略する人も多いですね・・
実は、日本は略文字だらけの国で、国外にいると結構迷う時があるんです。
「FB」「PC」という、もう基本中の基本のワードでも「ん??」となるくらい、海外ではあまりこの省略形の馴染みがないのです。
英語圏の人は、基本的には言葉を略すことはしませんので、例えばメール文字で、「See you」を「C U」、「To you」を「2 U」、「Later」を「L8er」なんて略す事も有名ですよね。
実は、これらを使っているのは、子供か、外国人(英語圏外)の人がほとんどです。
純粋な英語圏の人は、単語は綺麗に正確にスペルを綴ります。
略すのがクール!と思って略文字満載で英語圏の友人にメールを送ると、幼稚だな、なんて思われかねないので、使う相手にはご注意を。(笑)
セトリも、最初はオッ?て思ったけど、結構皆さん頻繁に使っていますよね。どちらかというと「セットリスト」と呼ぶ人の方が少ないかもしれませんね。(汗)
私が一番苦労したのは、RH(リハーサル)という言葉が日本から送られてきた時。
だって、インターネットで調べても、その意味が出てこない!
聞こうかどうしようか迷いながらも、送ってこられた本人に聞きました。
なるほど、リハーサルね。
これって、日本では音楽業界では普通に使われているのでしょうか?
覚えなきゃですね。
「セトリ」のおさらいをしてみよう!
では、具体的にセットリストを作ってみましょう。
演奏リストには、適当なタイトルをつけますね!
『 My Acoustic Solo GIG @TOKYO XXホール 20XX年X月X日 』
*約1時間予定
SE :The Doors「Break On Through」
(下手から入場)
(セッティングチェック後、PAに合図出しで演奏スタート)
1曲目「俺の人生」
(MC)
2曲目「この世に生を受け」
3曲目「山あり谷あり」
4曲目「転落続きだぜ」
(MC:ゲストミュージシャンXXさんを紹介→上手から登場)
5曲目「俺たちの花道」(ゲスト参加)
6曲目「明日へ向かってジャンプ」(ゲスト参加)
(MC:ゲスト上手から退場)
7曲目「大空へ羽ばたくのさ」
(MC:新曲紹介、リリースPR→エンディング曲)
8曲目「DO NOT WORRY, BABY!」
(下手に退場→アンコール→下手から再入場)
*アンコール曲「蛍の光」
*アンコール予備曲「Bad'N'Ruin」(The Faces カヴァー)
(上手へ退場)
(終)
はい、こんな感じで。(笑)
少々タイトルふざけてるものもありますが、取り急ぎ。
これは一応、例ということで、スタイルは自分の好きなように書けば良いと思います。
イベントのオファーを受けた時は、主催者側からセットリストや、ステージング等の記入用シートが送られてきます。
項目通りに埋めながら記入していけば良いだけです。
難しいものではないですよね、セットリストは。
プロのイベントやメディアで放送されるライブなどは、演奏する曲ごとに、具体的な分数を知らせる必要もあります。
全体の進行を時間通りに進めるためにも大事なことなので、正確な分数をきちんと調べて記入します。
また、メディアで放送されるもの、公共のものに音源がのる可能性のあるライブは、著作権の関係もあるので作詞作曲者の記入欄もあります。
自分達のバンドがそういったイベントに参加する場合、上記のように、いろいろと細かい予定や詳細を事前に知らせることが必要になりますが、提出後の変更はNGですので慎重に考えた上で、セットリストや指定シートを作成しましょう。
どうしても曲順を変更したいと思った場合は、相談で可能な場合もあるかもしれません。
しかし、イベントには音響関係者だけでなく、舞台監督がおり、プロデューサーをはじめとする大勢のスタッフがいます。
その方々が事前に全体を構成するための提出ですから、送ったものが周知された後に変更を願い出るのは大変迷惑な話しとも言えますよね。
もしかしたら、時期によっては全ての段取りが変わってしまうかもしれません。
セットリスト等、必要書類は期限を守り、内容をしっかり確認した上で提出しましょう。
自分でオーガナイズするステージとなると、演奏の全体時間さえ把握しておけば、一番最初に私が例に挙げたような簡易セットリストを自由に作成すればOKです。
あくまで、自分がステージ上でテンパってしまわないよう、リマインズするためのものがセットリスト。
当日までにひっそり、組み立てておけば良いだけです。
もちろん、頭の中に全て入ってるなら?無理に作らなくっても大丈夫です。
オーガナイザーや主催が別の場合は、オーガナイザーやPAさんにもわかりやすいリストを作りましょう。
ステージが設置してある会場は、時間の限りがありますよね。
ソロコンサートも勿論そうですし、対バンの場合は更に自分達の持ち時間が短いので「あの曲も、この曲も」と候補を出していると、全くそれが枠に収まらないことに気づきます。
また、頭の中で流れを決めていても、その通りに進むとは限りません。
バンドじゃなくて弾き語りのステージだし、自分の中で把握してれば大丈夫・・・なんて思ったりするものですが、どの曲から演奏して、どういうアレンジで何分ぐらいで収めるかなど、ある程度シュミレーションしてリストに起こしておくのが得策です。
当日そのセットリストを見ることがなくても、事前の準備として頭に入れるために作っておきましょう。
スタジオで練習するときには、時間を測ってやるのもいいですよね。
その時間に合わせて、軽くセットリストを作り、実際に時間を見ながら演奏してみるのです。リハーサルのようなつもりで。
例えば、対バン枠でやる時用の、20分バージョン、30分バージョン、40分バージョン。
ソロライブ用の、1時間、2時間。
あとは、友達のコンサートのゲスト枠とかジャムセッション用に15分くらいのリストを作っておくと結構役立ちます。
「ちょっと演ってほしい」って言われた時の枠って、15分ってことが多いです。(笑)
15分は本当に選曲に困るんですよね。
4曲いけそうで行けない、3曲では物足りない、ちょっと長い曲やったりちょっと喋るとやっぱり2曲が妥当・・・など。まあ、十分に満足なアピールができる時間ではありません。
だからこそ、15分用に「ここぞ!」という曲目を決めておくと便利ですよ。
実際に通してやってみると、1時間2時間は、意外と間が持たなかったりするし、20分だと簡単に時間がオーバーしてしまいます。
また、単調にならないよう、曲調の流れで全体の雰囲気を作るのも大事ですし、MCを入れるタイミングも決めておいた方が楽です。
そういうのを、メモ書き程度でも良いのでセットリストを決めておき、イメージトレーニングしておくとライブの時に気持ちに余裕が出ます。
あと、ライブ会場では、主催やオーガナイザー、競演するミュージシャンたちだけでなく、PAさんと照明さんへの挨拶もお忘れなく!
バンドやアーチストの力がライブにとって一番大事、そんなのは当たり前。
PAさんと照明さんが、ライブの雰囲気を左右すると言っても過言ではないです。
音の響きひとつ違うだけで、全く違いますしね!
お世話になることに感謝して挨拶した上で、無理を言わない程度にきちんと自分の音のイメージを伝えておくと、より良いライブになると思います。
私の少し変わった例になりますが、あるライブでの出来事です。
会場に到着し、ぐるり皆様に挨拶を済ませた後に、軽くステージ上を見たところミラーボールを発見!
そしてリハーサルの順番に。もちろんセットリストは提出済です。
軽く音響チェックをした後に、こんなお願いをしてみたんですよ。
「3曲目のジャズ風の曲、この出の部分で、いかにもビリーホリデーが歌ってる’50年代のジャズバー、といった雰囲気にしたいんですけど、あのミラーボールって回せたりするんでしょうか?」
そう伝えたところ、照明さんが
「照明の色合いは希望ありますか?」
と、質問を返してくださいました。
すかさず、大きなガラス玉の指輪をした手を振り上げ、
「イントロはグリーンで、入りでこの指輪が光るような感じで、あとは全てお任せします!」
ちょっと抽象的な表現もありましたが、そう伝えました。(笑)
「わかりました。」
続けて、
「どこで(ミラーボール)回します?」
そこで回答。
「セカンドのバース頭出しのジャストでお願いします。」
もう、バッチリでしたね。50年代にタイムスリップな感じでしたよ。
ミラーボールが回ってくれた瞬間、あまりのジャスト感に鳥肌でした。(笑)
「全てお任せ」ということでも、PAさんも照明さんもプロなので完璧にやってくださいます。
リハーサルの音響についてのリクエストのやり取りは一般的ですが、演出面も自分達の意見が明瞭に伝われば、すごく良心的に協力してくれますよ。
そのためには、自分たちで具体的な構成と流れを把握しておき、明確なリクエストを伝えられるようにしておきたいです。
まずはセットリストでイメージトレーニング、おすすめです。
バスキングのセットリストはイメージだけでOK!
さて、バスキングも、自分だけのステージです。
イギリスでは、1セット、2時間。最低でも2セットのバスキングをします。
その基準でいくと、合計4時間の自分だけのショウは確実に行えるわけです。
日本でバスキングをする場合は、どれくらいの時間をやるが一般的なんでしょう。
1〜2時間としても、それでも十分なステージの時間ですよね。
最低でも1時間も演奏するわけですから、やはりセットリストは考えておいた方が良いのでしょうか?
答えは「NO」です。
実は、バスキングにセットリストは不要です。
無駄。(キッパリ)
ただ、ざっくりとしたイメージは重要です。
こんな曲をやろう、あんな曲をやろうという、ある程度の曲決めは必要です。
しかし、演奏曲の構成を決めても無駄。
何故ならバスキングはハプニングがつきもの。バスキングというライブ演奏は、その時の空気感や場所、通行人のフィーリングによって常に変化する生き物です。
確実にセットリスト通りには演奏できません。
準備するだけ時間の無駄なのです。
そこは音響設備も何もない路上ですから、30分頃に優しいバラードを演奏しよう、なんて思っても、観光客で大騒ぎしていて音が埋もれてしまうかもしれません。
激しい曲を演奏しようとしたら、酔っぱらいの集団が来て「うるせえ」って絡まれるかもしれません。
それ以前に、ストリートを行き交う人たちは、ほとんどの人が「一瞬で通り過ぎる」のです。
だとすれば、その一瞬が勝負。
街の空気感が忙しい雰囲気であれば、癒しになるようなあたたかい曲を。
スポーツ観戦後で皆の気分が盛り上がっているときは、みんなで合唱できるような楽しい曲やロックな曲を。
「この場所は、今、こういう曲を求めている」と、自身で察知したなら、その雰囲気の曲を延々とやり続けた方が良いのです。
その時、その場所の雰囲気に合わて、人々が求めるものが変わってくるのがバスキング。
そして、路上は公共の場所である限り、2時間立ち止まってもらうことを前提にしたり、自分の見せ場を作ったりすることは好まれません。
MC?
はい、バスキングでMCはやってはいけません。
そこは自分を主張する場所ではなく、通行人の方々に音楽を届ける場所。バスカーは主役ではなく、脇役。音楽を届けるデュークボックスなのです。
ただ、例外としては、日本の場合はプロモーション的な意味でストリート演奏を行うことが多いですよね。
場所の許可があり、それを自身のライブとして人を集める目的でやるのであれば、セットリストを組んで、集まってくれたオーディエンスが飽きないような流れで演奏するべきです。
一般的なバスキングは、レパートリーが多ければ多いほど良いのは当然として、それらのレパートリーを、その状況に合わせて自在に変化していくのが正解です。
もしも、立ち止まって2時間丸々聞いてくれるような人がいたなら、そこにどんどん人が集まったなら、少し変化を加えながらやればいいだけ。
とにかく、常に周囲を見て雰囲気を察しながら演奏するのがバスキングですから、事前の準備は全て無駄、とくらい考えておいた方がエコですよ。(笑)
必要なのは、楽器と身体。そしてレパートリーと臨機応変に演奏できるような心構えで挑むことです。
次回は、セットリスト無しでどうやって1時間以上もバスキングをするんだろう?と言う部分について語っていきたいと思います。
ご一読ありがとうございます。