イギリスで、アフタヌーンティーを体験した事があるだろうか。

その名の通り午後に紅茶を楽しむという、イギリスの古くからの習わしのひとつであり紅茶と共に軽食や焼き菓子等を頂く、いわばイギリスのおやつタイムの名称である。

元々は上流階級のご夫人達が社交の場として始めたものらしいが、現代ではイギリスの文化のひとつとして広く普及し、現地の人達から観光客まで、多くの人が楽しむイギリスの午後の名物イベントとなった。

この、アフタヌーンティーという言葉の響きに憧れる日本人はとても多い。

お洒落で美味しいカフェが多く存在する日本では、当然アフタヌーンティーなるメニューを提供しているお店も多いわけだが、本場英国風のアフタヌーンティーを一度経験してみたい、そう思う観光客は少なくないのではないだろうか。

これに関しては当たり外れというよりも、個人の予算に合うのかどうか、と言う問題が大きく関わって来る。アフタヌーンティーに極端な当たり外れは無い。値段が高いか安いか、場所をどこで体験するか、ただそれだけの違いである。

個人的には、予算の余裕が有る人以外は、お店で高いアフタヌーンティーをオーダーするよりも、アフタヌーンティーの格であるスコーンのみを味わって欲しいと思う。

アフタヌーンティーを頂く場所として、一般的に有名なのは、ホテル内のラウンジやカフェ等で頂くアフタヌーンティーだ。

ただこれらはイギリスで寿司ランチを頂くよりも高い。そして、基本的にドレスコードがあるため、予約をしたは良いが店に入れなかったというケースも多い。フォーマルな服装で気取って頂くのが面倒くさい方や、貧乏人は、その情報はあまり頭に入れない方がいい。

ある程度高級な雰囲気を味わえて、我々凡人にも比較的手が届き易い場所が、デパート内や街角にあるカフェだ。もちろん、こちらにはドレスコードは一切ないため、ジーンズにスニーカーというスタイルでもアフタヌーンティーを頂く事ができる。

アフタヌーンティーを出すカフェとしてロンドンで有名なのは、日本でも有名な英国のデパート、フォートナム・アンド・メイソンの本店にあるカフェである。

こちらの店でのお値段は一人当たり四十ポンド、つまり現レートで七千円強からという事で、平均してのコストが二十ポンドから四十ポンド弱という、数多くのカフェで提供されるアフタヌーンティーの中では決してお安くはない。

だが、ホテルで提供されている高級アフタヌーンティーよりは良心的なプライスとも言え、店のお洒落な雰囲気と、日本人の誰もが耳にした事のあるブランド名の力を考えると一生に一度、二度あるかないかのイギリス旅行で、四十ポンドを一回のお茶代に出資する事は、おおむね許される範疇である。

ただやはり、その四十ポンドをセーブし、イギリス国内で一カ所観光地巡りを増やし、その交通費にあてた方が良いのではないかと思うのが、私の本音だ。

フォートナム・アンド・メイソンのデパートの地下一階には、スコーンを一個単位で買う事が出来るパン屋がある事をご存知であろうか。

そこへ行けば、スコーンを菓子パン程度の価格で購入する事が出来る。それを宿泊施設に持ち帰り紅茶と共に頂けば、お手軽にフォートナム・アンド・メイソンのアフタヌーンティー気分を味わえるというわけだ。



アフタヌーンティーは、サンドウィッチ、スコーン、フルーツ、そしてケーキ等のスウィーツが盛られた豪華な三段プレートの軽食を、紅茶や珈琲、またはシャンパンと共に楽しむ、イギリス名物のメニューである。

その名の通り、そのメニューを出すのは午後二時頃から夕方五時頃まで、とオーダー時間を限定している店も大変多い。

確かにその優雅なお茶の雰囲気には憧れるものだし、経験しても損は無いと思う。

しかし、そのお味を試したいと言う目的だけならば、スコーンを食べれば十分に事足りると私は思うのだ。

あと、イギリスにはクリームティーというメニューがあるのをご存知だろうか。

ミルクティーの事ではなく、紅茶とスコーンのセット、という意味である。これが、アフタヌーンティーのプチバージョンのメニューに値すると言えよう。

どうしても外で頂きたいと言う方は、はっきり言って、これさえ押さえておけばアフタヌーンティーを楽しんだも同然なのだ。

このクリームティーという名称のクリームの意味は、ミルクティーの事を指すのではなく、実はスコーンのつけ合わせから来たものである。

イギリスのお店で出される焼きたてのスコーンには、必ず、クロテッドクリームとジャムが添えてある。

このクロテッドクリームが大変美味しく、アフタヌーンティー乃至、クリームティーの重要な役割を占めるものであり、もしもクロテッドクリームが添えられていない場合は、文句を言う資格が我々には十分にある。

極端に言えば、このクロテッドクリームが英国風アフタヌーンティーの格である。あとは何て事ない、ただのサンドウィッチとケーキが並べられているだけなのである。

気になるクリームのお味だが、生クリームとバターを半々で混ぜたような濃厚かつ、さっぱりとした不思議な味わいであり、このクリームを一塗りするだけで、美味しいスコーンに更に味の魔法をかける事が出来る。

日本ではなかなか食べる事が出来ないと思うので、是非試して頂きたいと思う。

クロテッドクリームは、イギリス国内であらばその辺のスーパーで手軽に購入出来るので、スコーンと共に購入し、自宅でお茶を入れてそれらを食すれば、それだけで十分すぎる程に美味しいイギリスを体験する事が出来る。

ちなみにこのクリームは、一度封を開けるとその持ちがとても短い。一週間ぐらいで使い切らないとカビが生えてしまうため、集中して食さなければならない。目方が増えるのは致し方ない。

肝心のスコーンであるが、スコーンはどの店で購入しようとも外れは無い。街角のカフェや、スーパーのパン売り場で気軽に購入しても大丈夫だ。

私のお勧めは、マークス・アンド・スペンサーのフレッシュパンコーナーに置いてあるスコーンである。たかだか数十ペニーで美味しいスコーンが体験できる事を保証する。

そもそもイギリスのパンに外れは皆無だ。次いで言うと、ショートブレッドやビスコッツ等のシンプルな焼き菓子も、ついつい食べ過ぎてしまう程に本当に美味しい。小麦で作った物は美味しいと解釈しても良いのかもしれない。

日本で衝撃的に美味しいクロワッサンに出会えども、イギリスで美味しいと感じるクロワッサンに敵う味はなかなか無い。

美味しい菓子パンが豊富な日本であるが、イギリスで美味しいと思うパンは、その素材の味を活かしたシンプルなパンだ。菓子パンや、お惣菜パンらしきバラエティーは日本よりも断然少ないし、それらの味は人それぞれに好みはあるかと思う。

しかし、シンプルなパンはどんな種類を選べども間違いは無い。イギリスに来たなら、しばらくは米の事を忘れて、パンを食する事に徹するのが一番と言えよう。

また、チーズやヨーグルト等の乳製品も外れは一切無い。そして、それらの値段はかなり安く、量もボリュームがある。

日本に戻る度に、何を食べても美味しい、そう感じる食事情には本当に感動するし、そんな日本に生まれた事を幸せに思う。

しかしながら、日本で必ず恋しくなる、イギリスの食べ物があるのも事実だ。

乳製品、パン、そしてベーコンや生ハム、サラミやチョリソー等の肉製品である。

これらの食べ物は、日本で食べるよりもイギリスで食べた方が美味しいと、個人的には断言出来る。

ベーコンやサラミ等は、塩気が強いため好みが分かれるかもしれない。しかし、それらの味は、イタリアで食べるパンチェッタやプロシュートとほとんど変わらないと伝えれば、その美味しさが伝わるかと思う。

イギリスで美味しいと思う食べ物はまだまだ他にもある。しかし、それらを伝えるには時間がいくらあっても足りない。

それほど、イギリスは世間が思う程に、そこまで不味いわけでもないと言う事だ。

(つづく)