イギリスのデザートについてお話ししたいと思う。

レストランでデザートを頼むのならば、ケーキよりもパイやタルトを選んで欲しい。

ケーキは、どれほど見た目が良かろうとも半分以上が外れであると断言する。決して見た目に惑わされないで欲しいのだ。

実際には、美味しいケーキはイギリスにも沢山あるし、私も好んでよく食べる。

しかし日本で食べるケーキというのは桁外れに美味しい。それがやっかいなのだ。

日本のケーキは、高級レストランのみならず、身近なカフェやコンビニエンスストアであろうとも、外れなく美味しい。つまり、日本のケーキが美味しすぎるが故に、イギリスのケーキを不味い、と感じてしまうわけである。イギリスでデザートを選ぶならば、ケーキ以外をお勧めする。

しかし、パイやタルトはとても美味しいので、是非試して頂きたい。

パイならば、有名なアップルパイ以外にも種類は豊富だ。フルーツをたっぷりと包んでいるパイは本当に美味しい。

イギリスでは、パイはディナーのメイン料理にもある程、肉やチーズ等が包まれたおかず系のパイも豊富である。イギリス人シェフのパイ作りの技、そして、焼き加減に間違いは無い。安心して召し上がって頂けるかと思う。

タルトに関しても、フルーツがたっぷりと盛られたタルトは本当にジューシーで美味しい。イギリス人はやはり、フルーツや野菜がとても好きなせいか、そういった食材を惜しみなく使用しているメニューが豊富であるというのが、イギリスでの食事情の利点であると私は思う。

個人的にお勧めする、イギリスで是非食べて頂きたいスウィーツが、「バナフィーパイ」と呼ばれるパイだ。バナナのパイなのだが、バナナをたっぷりと練りこんだクリームが絶品の、至福のスウィーツである。テスコやウエイトローズ等のスーパーでも、お得なお値段で丸ごとホールで売られているが、ペロリといけてしまう。甘いもの好きの方は是非お試し頂きたい。

あと、イギリスにはトフィーと名のついたスウィーツが数多く存在する。

有名なところでは、トフィーのプティングだ。プティングとは、日本で連想されるプリンの事ではなく、ずっしり重みのあるパウンドケーキの事を指す。

独特のかなり甘みの強いトフィーと呼ばれるカラメル味のカスタードが、これまた甘みの強い洋酒のパウンドケーキにたっぷりとかけられているというデザートである。

しかしながらこのデザートに関しては賛否両論であるので、甘味が好きで更に冒険心のある人は是非トライしてみて欲しいが、少々迷うようならばやめた方が安全である。

とにかく、ケーキはやめた方がいい。

食後の飲料は珈琲よりは紅茶を、アイスよりはホットを、本来ならばそう伝えるところだが、それは一昔前の話しだ。現在ではイギリスで外れの珈琲を出す店はとても少なくなっている。

イタリアやアメリカから、カフェの有名チェーン店が多く進出し普及しているせいもあり、今では、美味しい珈琲はイギリス人にとっても身近な飲み物となった。

カフェどころかイギリス料理のレストランですら、豆の挽き方からこだわっているかのような、濃厚で香り高く、美味しい珈琲を出す店が近年では増えて来ている。カフェイン中毒の人間をもうならす程の本格派の珈琲を煎れる、本格派カフェがどんどん頭角を表してきたのだ。

イギリス人が珈琲よりも紅茶を好むと言われた時代は、既に過去の話しである。いや、実際には紅茶派の人間が今でも多いのは事実だ。だがイギリスのカフェで飲む珈琲は年々レベルが上がって来ている。これは、珈琲に対してのイギリス人の舌が肥えて来ている証拠である。

そして、数年前には無かったアイスコーヒーというメニューも、今ではちゃんとカフェに存在する。

正式には、アイスドコーヒー乃至、アイスアメリカーノ、またはコールドコーヒーとオーダーした方が良い。氷状の珈琲が出てくる事への防御策である。

ちなみに、アイスオーレや、アイスカプチーノに関しては、日本でオーダーする名称と同じ言い回しで通用する。

珈琲が大好きであり、そして、冬でも冷たい珈琲を愛飲していた私にとって、渡英した当初にイギリスで不便と感じた事は、街角でアイスコーヒーが飲めないという事だけであった。どんなに目を凝らしてメニューを眺めども、アイスコーヒーと言うメニューはそこには存在しなかったのである。

時に私は、

「アイスコーヒープリーズ。」

と、自ら希望をウエイターに伝えた事もあったのだが、

「氷の珈琲? 何だよそれ。」

そう苦い顔で返される事が多かった。

当時、珈琲を冷やして飲む習慣は彼らにはなかった。そして、アイスコーヒーも直訳をすれば氷珈琲である。確かに、彼らにとっては意味不明の言葉である。

その後、時代が変わると共に徐々にアイスドコーヒーが普及していくわけだが、その過程は実に悲惨なものであった。

初期のアイスドコーヒーは、まさに、珈琲味の氷が半溶けになった状態のミルクコーヒーであり、その出来は作り手によって当たり外れが大変激しい飲み物であった。

しかし現在では、冷たい珈琲にも外れは無くなった。日本で飲むそれらと同じ味を、イギリスでも楽しむ事が出来るであろう。

ちなみに、イギリスでは、ミルク入りの珈琲の事をホワイトコーヒー、ミルクが入ってないものをブラックコーヒーと呼ぶ。

イギリス人の中では、今でもホワイトを好む人が圧倒的に多い。また、そのミルクは日本の珈琲に添えられるような、濃厚なクリーム状のミルクではない。ただの牛乳である。

そして、そのミルクの量の比率は我々からしてみるとかなり多いので、ホワイトコーヒーに珈琲の苦みが残っている事はほとんどない。つまり、ほとんどホットミルクである。

珈琲の風味を残しながらもミルクの甘みが欲しい方は、カプチーノをオーダーする事をお勧めする。

しかし、ホワイトコーヒーはイギリス人にとても需要がある飲み物だ。友人の家を訪れた際に出される珈琲には、既にミルクと砂糖がたっぷりと入ってしまっている事がほとんどである。

経験上、イギリス人の家を訪れるならば、玄関に入った瞬間に、

「砂糖とミルクは抜きで。」

と、先に伝え、甘味は後で自分で付け加えた方が無難だ。とんでもなく白くて甘い珈琲を頂くはめになってしまう。

ブラックの珈琲を好むイギリス人は、未だに少ないのが現状のようだ。

余談ではあるが、イギリスで紅茶と言えば、ミルクティーの事を指す。これまた、多普通の牛乳をたっぷり入れた紅茶であるが、これが所謂、英国風の紅茶なのである。日本で親しまれているレモンティーや、ストレートティーは、イギリス人から言わせれば邪道なのだそうだ。

イギリス人の前で紅茶の通を語り、ストレートティーを飲む事だけは避けたい。

珈琲をブラックで飲む人を見て、それに違和感を感じるイギリス人は居ないであろう。

しかし、ストレートティーを飲む人を見て奇妙に思うイギリス人は未だに多い。

紅茶であらばイギリス国内では是非、ミルクティーで通して欲しい。

それが、紅茶の国と呼ばれるイギリスで、より現地人らしく紅茶を楽しむポイントなのである。

(つづく)